「さあご主人様! お着替えの時間ですよ!」「気合はいりすぎだろ……。ウェンディ、たまには自分の服を選んでもいいんだぞ?」「何をおっしゃるんですか! 私の楽しみを奪わないでください! 私の服はご主人様が私に着せたい服を選んでくだされば何でも着ますから!」それはそれでどうなのだろう。でもウェンディに着せたい服か……。まっさきにビキニとパレオ、そして麦藁帽子が浮かんだ俺は正しいと思う。ああ、日焼け止めをウェンディの美しい背中に塗りたい。あの真っ白い肌を紫外線から守りたい……。水をはじく素材ってありそうだよな。帰ったら隼人に聞いてみよう。きっと、あるはずだ。なければおかしい。そんな異世界は俺が認めない。こうしてウェンディの着せ替え人形となって一時間くらい。俺は数着の服を購入し、ついでにアイナ、ソルテ、レンゲの欲しがっていた服も全部購入する事にした。シロとウェンディは必要ないとのことで、別の店で何か買ってあげよう。満面の笑みの店主を背中に、ご満悦そうな4人とともに表に出ると、ご満悦じゃないシロのお腹がなる。「そろそろ飯にするか」「そうですね。少し早いですが今の時間なら空いていると思いますよ」「適当な店でいいよな。すぐ近くのそこでいいか」「ちょっと、そこ結構な高級店よ?」「んーまあ大丈夫だろ」オークションに備えてお金はある程度潤沢にあるしな。オークションでも何が欲しいって訳じゃないし、シロのおなかは限界そうだしな。「じゃなくて、こういう店って奴隷はお断りの場合もあるの。あんたは忘れてそうだけど私達は皆あんたの奴隷なんだからね」「あー……。じゃあ普通に屋台にするか?」「そうね。それが」「お客様! 当店は個室もございますから何一つ問題ありませんよ!」突然店の中から出てきたコック帽子をかぶったがたいのいいおじさん。どうやら店の中で俺たちの話を聞いていたらしい。というか隼人の紋章効果凄すぎだろう。何処に行っても優遇処置だ。まるでおれ自身がVIPになっているように思えてくるが、背後に隼人の幻を見ている事に気がつかないわけは無かった。まあ、何処の店がどーだとか別に言わないんですけどね。そしてこの高級そうな店で食事をとることにしたのだが、本来はやはり奴隷と共に食事を取るのはご遠慮願っているらしい。ただし、個室が空いている場合などは例外らしく今回はその例外ということらしかった。当然高級な店ということもあり、食事は美味かったのだが……。「主のご飯の方が美味しい」「ですね。食材も普段から使っているものばかりですし、ご主人様がお作りになられた方が美味しいです」そんなわけは無い。こちとらまだ料理のスキルレベルが1なんだぞ。多分この料理を作った人はレベルが1よりは確実に上だろうし、味付けなんかも絶妙だ。その証拠にソルテもレンゲも終始笑顔で食べる為にほっぺを押さえて目を瞑りしっかりと味わっているのだ。「ええっと、お食事代なのですが92万ノールです……」「ああ、ちょっとまってな」結構いったな。シロが文句を言いながらおかわりを普段どおり頼みまくってたしこれくらいはかかるか……。オークション用にお金貯めておいてよかった。まあ、一品一万ノールは余裕で超えてたし仕方ないか。俺としては十分美味しかったし。ただ昨日食べたクリスの作った夕飯の方がうまかったのは事実だ。んー。王都での飯はちょっと微妙だな。周りにハイスペックが多すぎて微妙だと思ってしまう。これなら屋台の雰囲気を楽しんだ方がましかもしれない。まあこれもいい経験ができたということで、次からの参考にしよう。「さて、腹ごしらえもすんだし道具屋をみたいんだがいいか?」「錬金術用の?」「そうそう。何か面白い材料無いかなって」「んー……ここからは結構遠いっすね。ならせっかくだし大噴水をみていかないっすか?」「大噴水?」「そうっす! 王都の噴水はめちゃくちゃでかいっすからね! 一つの観光ポイントになってるっすよ!」