「三人共、卒業おめでとう」「あ、先生っ!」 私たちと比べると遥かに大きく膨らんだお腹を抱えて声をかけてくれたのは宮野先生、私たちの進むべき道を示して、私たちの人生の転機を示してくれた大切な恩師。先生のおかげでこんなにも早く妊娠することの悦びを感じる事ができた。本当に感謝しても感謝しきれない。「先生は出産前の大事な時期なのに、大丈夫なんですか?」「ええ、心配しないで。四人目だし、いつ産気づいても大丈夫なように旦那が控えてくれるから」 先生の視線の先には大家さんと宮野先生の子供たち三人を本当に楽しそうに面倒を見ている先生の旦那さんの姿があった。 宮野先生の旦那さんみたいな優しくて真面目なだけが取り柄のような人と結婚したら、何の心配もなく思う存分大家さんに種付けして孕ませてもらって何人でも赤ちゃんを産む事ができそう。「まだ産まれてないのに『最低でも十人は産んでくれよ』なんて……もう、あの人ったら」「愛されてますね。ごちそう様です」 出産を間近に控えて本当に幸せなのか、普段学校では聞いたことのない旦那さんへの惚気まで聞かされて、一斉に笑い声をあげる。 ひとしきり笑った後で、淑子がしみじみと振り返るようにつぶやく。「それにしても、本当に今年はいろんな事があったわね」「そうね、まさかこの歳になって……想像もしてなかったわ」「ええっ、そうね。でも、おめでたいことだからいいんじゃない?」 そう、確かに一番大きな出来事は私たちの妊娠だったけど、一番驚かされた出来事は……やっぱりアレかな。『私たち新規採用された看護師の母親の同時妊娠』 これに尽きるわね。