シャングリ・ラで改めて【油】で検索を掛けてみる。最初に出てくるのはキャノーラオイル等の俗にいうサラダ油だ。 これなら、リッター300円なのに……。 ピン! 閃いた。そういえば天ぷら油などの廃油を加工して、ディーゼルエンジンに使うって話があったじゃないか。 ニュースで見たぞ――確か、バイオディーゼル燃料とかナントカ……。 早速、シャングリ・ラで検索を掛ける。ほうほう――結構本が出ているな。 バイオディーゼル燃料関連の本を電子書籍で買って片っ端から読むことにした。「何してるの?」 俺の怪しい行動が気になったのだろう。「本を読んでいる」「ええ! 私も読みたい!」「え~? 外国の本だから外国語で書かれているんだぞ?」「その外国語を覚えたら本が沢山読めるの?」「ああ、読める」「私、覚える!」 アネモネが一大決心をしたかのように立ち上がった。 彼女の物覚えは悪くない。悪くないどころか結構良い部類に入るだろう。 せっかく彼女が覚えると言ってるんだ。勉学の炎を消してはいけない。 しかし日本語なんて覚えてメリットあるのか? 確かに覚えればシャングリ・ラで買う本が読めるので知識は広がるだろうが……。 先ずは絵本を買ってみた。小学生低学年向きだな。 買おうとしたのは絵本で定番ネタの人魚姫とシンデレラだが、購入ボタンを押そうとして絵本に驚いた。「萌え絵じゃん!」「もえ?」「いや、こっちの話だが――」 購入ボタンを押した。「ポチッとな」 バサッと絵本が落ちてきた。古本で一冊30円だ。 子供用に買っても大きくなったら読まないからな。売りに出されてしまうのだろう。「凄い~! 綺麗!」 落ちてきた絵本に、アネモネの目は釘付けになった。そりゃ、こんな綺麗なカラーの絵本なんて、この世界には無いからな。 しかし、今の絵本って萌え絵なの? だが、このままでは彼女が読めないので、この世界の表音文字と、ひらがなとの変換表を作ってやった。 漢字は難しいと思うが、ひらがな・カタカナぐらいはすぐに読めるようになるかもしれない。「ち ょ う ど お ひ さ ま が――」 彼女は俺の作った対応表と絵本の1字1字を見比べながら、ゆっくりと絵本を読み始めた。 だが人魚姫の半裸姿が少々刺激的らしい。倫理的に拙まずいのかもしれないが――2人の内緒って事にしてもらう。 彼女は顔を赤くしながらも、ものすごい集中力で読んでいる。 俺は彼女の読書の邪魔をしないように――電子書籍のバイオディーゼル燃料の本を読むことにした。 2人の読書は、ガソリンランタンの下で寝るまで続いた。