植物プランクトン・海藻・海草・光合成細菌などの生物は生活手段を光合成によっているため、エネルギー源として光が不可欠であり、自然界では主として太陽光を利用している.光合成生物は、自身が必要とする有機物を作るために、ある一定量以上の光を必要としている。その光の明るさを補償照度(compensation light intensity)と呼ぶ。
海では光は海面から入ってきて、水深と共にほぼ指数関数的に急速に減衰する。補償照度の光の届く深さ、すなわち自身の呼吸に必要な有機物を生産するのに必要な光の届く水深が補償深度(compensation depth)である。このため補償深度より浅い水深でないと、光合成生物は生きていくことができない。一般には、1日24時間を考えた日補償深度(diel compensation depth)の意味で補償深度が使われている。補償深度は生物によって異なっているが、海面が受ける光の0.1~1%の光の届く層であることが多く、表層の光の1%が到達する深さは透明度を2.7倍して求められることが経験的に知られている。貧栄養な熱帯の外洋では透明度が40mにもなることがあり、光が深くまで到達して補償深度は百数十メートルになるが、赤潮の発生しているような沿岸や内湾では1メートルにも満たないこともある。
真光層(euphotic zone)は海面から補償深度までの層を意味する。わが国では、長い間、一部でeuphotic zoneを有光層と訳して使ってきた。有光層(本来はphoticzoneのこと)は生物の感光限界までの深さを指し、海表面が受ける光の1億分の1%程度までの深さになる。海は、表面に近いほうから深い方に向かって、真光層・透光層(disphotic zone)・無光層(aphotic zone)の順で並んでいる。真光層と透光層を合わせたものが、本来の有光層になる。真光層内では生物の生産と分解が活発に起こっているが、収支としては生産が勝っている。
海洋では、前述のように水深が200メートルを超えるとほとんど光合成は行われなくなり、呼吸による分解が卓越する。その結果、有機物濃度が少なく無機窒素(硝酸塩)やリン酸塩等の無機栄養塩が高濃度に存在するようになる。「海洋深層水」とはこのような真光層以深の海水のことを指し、水温が10℃以下(低温)で陸地の影響が小さいため病原微生物等の少ない(清浄性)ことが知られているが、無機栄養塩が豊富(富栄養)なのは以上のような原因による。