明くる朝、目覚めるなり僕の身体は揺れる。 おっとこれは地震か、などと思ったのに違ったらしい。どうやら少女から身体を揺さぶられていたらしく、視界は左右に揺れ続けていた。「ねえ、ねえ、枕の下にこれがあったの。あなたは何か知っているのかしら?」「え、枕の下に……?」 ああ、すっかり忘れていたよ。というよりも寝起きなのだから頭が回らないのは当然か。目の前にはプレゼント用の包装紙に包まれた物を手にするマリーがおり、不安そうに彼女の眉尻は落ちていた。 そうそう、昨夜にマリーがお風呂に入っているとき、こっそりと隠しておいたんだ。ほら、眠るときは腕枕をするから気づけないだろうし。 それから僕はがばりと身を起こし、あえて真面目そうな顔つきをした。「ま、まさか、それがマリーの枕の下にあったのかい?」「ええ、そうなの。どうしましょう、私たちの部屋に誰かが入ったのかしら。もしも夢の世界に行ける事を知られたら、どんな事になるのかしら。盗まれているものが無いか一緒に探しましょう?」 さらに不安そうな表情をする様子に、僕は「違うんだよ、それはクリスマスプレゼントなんだよ」とネタばらしをしそうになる……けど、強い自制心でそれをぐっと我慢した。 しばらく考え込むように沈黙をし、それから彼女に視線を向ける。「僕も噂を聞いたことがある。クリスマスの夜、良い子の枕元にプレゼントをする存在がいるらしい。確か名を――サンタクロース、と言うのだとか」「!!!? 待って頂戴、それはどういう意味? まさかこの世界にも妖精のような存在がいる、という事かしら?」 そのまさかだよと頷くと、少女はごくりと喉を鳴らす。 それからプレゼントの中身を気にしだし「開けて大丈夫?本当?本当ね?」と何度も何度も問いかけてから、丁寧に包装紙を解いてゆく。 するとそこには目にも鮮やかな色使いをした絵本があり、薄紫色の瞳はまん丸に見開かれた。 海外の人の描いた絵は可愛らしく、犬なのかウサギなのか分からない生き物が両手を広げており楽しそうだ。「わ! わ! すごく可愛い! なにかしら、えーー、プレゼント!? ほんと? 人間違えじゃなくて、私にくれたの?」 ひゃああという表情をし、彼女の好みを知り尽くしたような贈り物を、しっかりと胸に抱く。 それからお昼くらいまで「見て見て」と見せびらかされたり「一緒に読みましょう」と誘ってくれたりと、申し訳ないけれど僕の頬は破裂しそうだったよ。 外にはすっかりと雪が積もり、反射した太陽は部屋を明るく染めてくれる。いつもよりも静かな都内のマンションで、薪ストーブにやかんを乗せて、僕らは絵本の世界をすっかりと楽しんだ。 もちろん特等席の座布団は、ウリドラが陣取ったよ。