「これは、レイス様……」 そこにいたのは、ルシウスの部下だったアレインだった。すぐ後ろにはルッチとヴェンが立っていて――、「三人ともお元気そうですね」 レイスは感情の窺うかがえない笑えみを貼はり付つけて語りかけた。「その、団長は一いつ緒しよではないんですか?」 アレイン達はレイスの顔色を窺いながら、他に同行者がいないか外に視線を向ける。質問の内容通り、ルシウスの姿がないか気になるのだろう。 この廃村はもともとの計画を完かん了りようした後に合流する予定になっていた場所で、レイスは二日前にアイシアとの戦いから離り脱だつした後、すぐにこの廃村を訪おとずれてアレイン達に情報を求めた。 しかし、この時点ではまだレイスもクリスティーナとフローラが拉致された事実を知らなかったこともあり(知ったのは現場へ駆かけつけた時である)、デュランからの聞き込みを優先せざるをえなかった。 したがって、二日間、アレイン達はルシウスが勝利して戻もどってくると信じて、この廃村に潜せん伏ぷくしていたことになるのだが――、「彼なら殺されましたよ」 レイスは実にさらりとした口調で事実を伝えた。すると――、「…………」 アレイン達三人の顔があからさまに強こわ張ばる。事実を受うけ容いれるのを拒きよ絶ぜつしようとしている顔をしていた。だから――、「ルシウスは死んだと言ったのです。因いん縁ねんの相手と戦い、惜おしくも敗れました」 レイスはもう一度、はっきりと伝えて、嘆なげかわしそうに溜ため息いきを漏もらした。「いやいや、何の冗じよう談だんです? 団長が殺された? 冗談でも笑えませんぜ?」 ルッチが乾かわいた笑みをたたえて言う。 だが、その目は笑っていなかった。「冗談ではありませんよ」 レイスが真顔で告げる。と――、「…………そんなわけねえ!」 ルッチが声を張り上げた。たっぷり湿しつ気けを吸っているはずの木製家屋に、彼の声がビリビリと響ひびき渡る。「……あまり大きな声は出すな」