そして、彼女は自身の脇差を鞘ごと抜き取り、俺に差し出した。「死なないと誓っておくれ。でなければ許さない」 何を許さないと言うのか。 彼女とは、出会って二日だ。そこまで深い関係じゃない。 でも、それってもう……。「誓うのか、誓わないのか、早く」 マサムネは余裕なさげに催促する。その頬は赤く染まっていた。流石に、ただのしもやけではないとわかる。「誓おう」「それだけ?」「それだけ」「……そっか」 俺は脇差を受け取った。 マサムネはくるりと俺に背を向けて、足早に去っていく。 ……ちょっぴり変な空気だ。尻のあたりがこそばゆくなる。 何か一言、伝えておきたい。そう思った俺は、ぱっと思い付いた言葉を口にした。「傘、ありがとな。雨が止んだら返しに行くよ」 去りゆく背中を呼び止めるように声をかける。 マサムネはぴたりと足を止めて、満面の笑みで振り返りこう言った。「君って、やっぱり素敵だ!」