初音さん、フリーズ。プチュンと画面が消えた音が聞こえた気がした。 やったよレアフラグゲットだよ! 十万分の一以下の確率だよ! ドヤ顔で缶コーヒー買いに行っていいよね。 まあ、初代まどマギのように、一瞬何が起こったかわからないフリーズもあるけどな。プチュン音もなくいきなりまどかがセリフをしゃべるなんていう静かな演出がフリーズと気づくまで十秒くらいかかったぜ。 ああ、なんで知ってるかというと、オヤジが実機を持ってるからだ。俺もよく遊んでるぜ、ひつまぶしに。「……琴音」「は、はい」 初音さんがしばらくしてからゆっくり琴音ちゃんのほうを向き、呼びかけた。「琴音あなたは……生まれてきて、幸せだったの?」 なんでそんなことを今さら娘に訊くのかなあ。それともさっきひどいことしたのをそんなに後悔しているのか。ミステリー、いやヒステリー? ──答えなんて決まってるだろうに。「……はい」 ほらね。「わたしは、お母さんの娘に生まれて、よかったと思ってます。それに……」 琴音ちゃんはそこで言いよどんで。 それでも、力強く最後まで言い切った。「お母さんの娘だったからこそ、祐介くんとも、知り合うことができました」 その言葉を聞いて、初音さんが思い切り自分の娘を抱きしめた。「琴音! ことねぇぇぇぇ……ありがとう、ありがとう! 私の娘に生まれてきてくれて、本当にありがとう……」 それから初音さん号泣。 なんだこれ、わけがわからないよ。弓矢を当てられたイン〇ュベーターか俺は。 ──でもさ。『祐介くんとも、知り合えました』 そんなこと言われたら、俺だって哭ないちゃうじゃないかい。アンタ背中が煤すすけてるぜ。 もちろん琴音ちゃんももらい泣きして、三人でしばらく泣いてた。 ………… ラブホの経営者の方、駐車場の片隅こんなところで大騒ぎしてごめんね。