「それじゃ諦めろ」「ふみゃ~」「それより、この粉を片付けよう。これが水を吸ったりすると、えらい事になるから」「どうなるにゃ?」「こびりついて取れなくなるんだよ。乾いている今の内だ」「解りました」 皆で、消火器の粉を片付けてから、アネモネの看病を交代ですると熱は朝までには下がった。 何ともないようで良かったな。医者もろくにいない世界だから、怪我や病気には気をつけないと。 ベッドの上で寝巻き姿のアネモネは、ちょっと元気がないがようだが大丈夫そうだ。 だが、食欲がないと言う。高熱で消耗したのだろう。 そのために俺はシャングリ・ラである物を検索した――あった、値段は650円だ。 なんか昔懐かしいパッケージなのだが、昔から変わってないのだろうか? しかし随分値上がりしたもんだな。昔は100円ぐらいで買えたような記憶があるんだが……。「病中病後と言えば定番はこれだな――桃缶」 俺がガキの頃は、病気の時は桃缶かリンゴだったんだが、めっきりこいつを食べる機会はなくなったな。 俺自身も30年ぶりぐらいじゃないか? それぐらい、食った記憶がない。 桃缶を見つめ郷愁に浸っていたのだが、重要な事に気がついた――缶切りが無いじゃないか。 再びシャングリ・ラを検索する。これまた昔懐かしい3徳缶切りが未だに売っている。1個500円だ。 ギコギコと缶切りで缶を開ける。今はプルトップでパッカンだからな。やっぱりこの儀式がないと缶詰を食う気がしない。 小皿が無いので、カップに桃を入れてアネモネに渡す。「何? これ……」「果物を甘く漬けた物だよ。病気の時に食うんだ」「……ぱく……凄く甘くて美味しい!」「にゃ~! 美味いにゃ? ウチも食べたいにゃ!」 ミャレーがアネモネのベッドの周りをウロウロしている。「ダメダメ、病気の人しか食っちゃダメなんだ」「ふにゃ~! ウチも腹が痛くなったにゃ~!」「腹が痛いんじゃ物を食っちゃダメだろう」 俺はシャングリ・ラから、正露丸を検索して購入した。ちなみに正露丸の商標権は一般化しているとの判断から消滅しているらしい。 落ちてきた正露丸の蓋を開けてミャレーに嗅がせる。「ほら、腹痛いなら、この薬を飲め。薬草を固めた物だ」「ぎゃ~っ! なんにゃ、その臭いは! 鼻が曲がるにゃ~! 腹が痛いのは嘘だにゃ!」 彼女は毛を逆立てて、部屋の隅で小さくなってしまった。