視線の全てを自分の胸に集めたイリスは、恥ずかしくて頬を染め、照れくさくて口もとを緩め、それを胡麻化そうとしてキロッと目玉を横に動かした。さらに唇の端から舌の先ものぞかせる。 百人以上の男たちに見つめられて、ついそうした表情を見せてしまったのだ。 成熟した肢体と美貌、それに似合わぬ少女のような仕草と風情に観客たちはさらに魅了された。 観客がイリスを堪能する時間をたっぷりとったところで姫さまが言う。「イリス。久しぶりにあなたの剣舞が見たいわ」 姫様の言う剣舞とは、ミランの武人が嗜みとして一通りは身につけているもので、公開の場で剣の型を披露することであった。 それはときに王族たちに鑑賞させるものであり、舞踏と実戦の中間のようなものともいえた。 イリスはこれにも素直に応じた。彼女の持つ剣は、反りの入った片刃の剣で刀ともよばれている。 それを青眼に構えた。舞台上の何もない空間、そこにあたかも強敵が存在するかのような緊張を湛えて静止する。 その構えは冷たくて静かだ。ミラン随一の女剣士として誉の高かったイリスは、この剣舞の名手でもあったのだ。 観客は剥き出しのおっぱいを鑑賞しつつ、その構えにも魅了された。 イリスは剣先を少し震わせてから鋭く踏み込み、同時に架空の相手の面を打った。 ついで袈裟に、逆袈裟に刀を振るったあと、一度刀を納め、今度は観客に正面を向けた。 幾分腰を落として静止する。 美しい女兵の美しい姿だ。剥き出しの胸は色よりも美を強調させている。 そしてイリスは抜き打ちで見えない敵を斬り、観客が瞬きする間に再び刀を鞘に納めた。 客席から大きな拍手が起こった。 イリスのおっぱいは揺れ動いて素晴らしかったが、それ以上に、彼女の示した型が様式美に溢れ、なおかつそれを超えて見事であったからである。 拍手は舞台上の他の女兵たちからも起こった。椅子となっているため手の使えないアリシア以外の、姫様を含む全員が盛大に拍手したのである。「あいかわらず素晴らしいわ、イリス。剣技ひとつとっても、やっぱり服なんかないほうがずっといいわね。残りの服もとってしまいなさい。そして今の剣技をもう一度見せて」 え! とイリスは驚いたようすを見せる。 残りの服とは、腰にある身近な白いスカートのことであろう。他にはないのだから。 だがもしかすると、そのスカートの下にあるはずのフンドシも取ってしまうのだろうか、と観客たちは期待した。 その姿で、さきほどの見事な剣舞をもう一度見せてくれるのだろうか、と。