「ハッ!?」 取り乱している間に雪がドアの前に立ち退路を塞ぐ。「ねぇ……あ・き・く・ん♪」 なんだかいつもより色気が何倍も増した目で俺に迫ってくる。 雪が、俺に……っ!「……えっ?」「今よ茜君! やっちゃって!」 俺は雪に羽交い絞めにされていた。 抵抗しようとしたが、思いのほか力が強い。「さぁ、覚悟しろ。美少女とキスできるんだありがたく思えよ」「や、やめろ……!」「実はな、俺がこの体になったのは呪いのせいなんだ。……本当に信頼している相手とのキスでそれは解除される。これは本当の話だ。信じてくれ。そして俺を男にしてくれ!」 し、信じてやってもいいがその「男にしてくれ」っていうのやめて! 怖い!! で、でも……中身が糞野郎な茜だったとしても! 今はどうみたって美少女! だからキスくらい……キスくらいなら……! いや、ちょっと待て。 呪いが解けたらキスした状態で男に戻るって事だよな!?「や、やっぱりいや……」 俺の言葉はそれ以上紡ぎ出す事ができなかった。 茜が俺の顔を両手で掴み、少し背伸びをしながら俺にキスをした。 父さん、母さん……ごめんなさい。 雪ともまだした事なかったのに……。 パァっと茜の身体が光に包まれ、俺のよく知っている姿になった。「ぷはぁっ……ほ、本当に……呪いが解けたのか?」「茜君おかえりなさいっ♪」 そして二人は俺の目の前で濃厚なキスをぶちかましやがった。 うらやましぃぃぃぃぃぃっ!! うらめしぃぃぃぃぃぃぃっ!!「……も、もう用はないだろう? さっさとどっかいけよ! もう俺の前に姿みせんな馬鹿野郎!!」 俺はめちゃくちゃ惨めな気持ちだった。 こいつらが居るともう自分を保てそうにない。「何言ってんだよ。言っただろ? お前も俺のハーレムの一員だってな」「何を馬鹿な事を言っ……て……?」 ふと、自室の鏡が目に入る。 そこに映っている一人の男と二人の女。 男は茜。 女は雪。 ……と、誰か。「……は?」「さっき少しだけ嘘をついた。俺にかけられた呪いは、本当に信頼している相手に女体化を押し付ける事で解除される」「はぁぁぁぁあぁぁっぁぁぁぁぁぁっ!?」「秋君……ううん、もう秋ちゃん、かな? 可愛いよ♪ 私、秋ちゃんとなら仲良くなれるかも……♪」 そう言って雪が俺の手を握った。「すっごく可愛い。秋ちゃんとなら……いろんな事してみたいな……♪」 ……マジで? え。いいの? そういうのアリなの? だったらこれはこれでいいかも……。「おお、雪も秋彦……秋ちゃんの事を気に入ったみたいで良かったぜ! じゃあ今からさっそく……」 ……ん?