車はゆったりと西湘バイパスの道を進み、頭上にはなだらかなカーブを描いた高速道路が見える。わあーと皆はそれを見上げ、合流する先へと3つの頭は同じ角度で追う。 そして正面へ戻れば、今度は新幹線が頭上を横断してゆくという、近未来的な光景だ。わああーともう少し大きな歓声を響かせて、僕を除いた皆は後方へと目を向ける。 再び視線を前へ戻すと、なだからな坂の先、僕らの道路は真横へとカーブを描いてゆく。立体的な道というだけで珍しいのに、その先へ広がっている光景は、さらに驚くべきものじゃないかな。「わ、わ、わ! うみうみうみ、海かしら、ねえねえ、海かしら!?」 そんな風に、僕と前方へ視線を行ったり来たりしている様子は可愛らしいね。答える必要も無いだろうし、にこりと笑みだけを僕は返す。 百聞は一見にしかずと言うからね。エルフさんの目で、しっかり見ると良いよ。 しばらく、坂道と青空だけの景色が広がり、その間も皆は待ちきれないようにはしゃぐ。そして、カーブを抜けた先、フェンスの向こうには……。「わあああーー! うみうみ、海! う、わ、あ、あ、あーー!」「ふうむ、海岸沿いに綺麗に道ができておるのう! しかし、空も海も気持ち良いくらい綺麗な青色じゃなあーー!」 そう、今日は長い時間をかけてこの海岸沿いの道を進む。 左手に大海原は広がり、右手には目も覚めるような緑色。晴天にめぐまれたおかげで、おそらくは長い時間を楽しめるだろう。 べたりと幻想世界の彼女らは窓側にはりつき、そして窓をあけると夏らしい湿度、そしてかすかな潮の香りが届く。マリーたちの髪も舞い、きゃいきゃいという明るい声はさらに増す。「ここから先は海のバカンスだよ。マリーは初めて見る景色だろうけど、シャーリーはどうなのかな?」 ちょいちょいと水平線を指差し、そして「ゼロ」という指サインをバックミラーへ向けてくる。溢れるような笑みを見るだけで分かっていたけれど、彼女も初めての経験らしい。 それにしてはウリドラまで目を輝かせているようだけど、魔導竜なのだから、今までも空を飛んで見ていたんじゃないかな。「ふ、ふ、わしの場合、単なる移動じゃからな。ほれ、下手に飛んだだけで人間たちは恐れおののくじゃろう。こうして海岸から眺め、しかも車で運んでくれるなど初めてじゃ」 にーーっと目を細め、猫のような笑みを向けてくる。 艶のある黒髪は風にもてあそばれて大変そうだけど、本人はまるで気にしていない。「わあ、わあ、大きいわ、本に書いてあったままなのに、本とまるで違うわ! ねえ、少し外で見れないかしら? 波の音がすると聞いたわ!」「そうだね、せっかく早めにつきそうだから、そこのパーキングエリアで停まろうか。あ、おまんじゅう売ってるみたいだけど、どうする?」「「買うーーーーっ!」」