アリシアは選んだ兵士に向き直った。「勝負を始める前に、私から貴様に命じておくことがある」 全裸の美女将軍を前にして、兵士の口元から下卑た笑みが消えない。「なんでありましょうか?」「この勝負、もし私が勝ったならば、褒美として顔にかけろ」「顔にかけろと? それは、何をかければよろしいのでしょうか?」 笑いを含んだ白々しい言葉に、アリシアは怒気を込めて答えた。「知れたこと。貴様の出す濁った汚い液体のことだ」「しかし将軍、きのうは別の者を相手に、飲み込みたいと仰せではありませなんだか?」「昨日は昨日、今日は今日だ。私は顔にかけろと命じておる」「かしこまりました」 ははは、とゲドゥガが、これは声に出して笑った。「アリシア将軍は、こういった勝負を既に何度もしておるようじゃの」「日に一度だ。今日で七日目となる」「ほほう。して戦績は?」「当初は負けが続いたが、この二日は勝利した」「それは重畳。で、褒美とやらについて、いま少し聞きたいものじゃ」 アリシアは忌々しげな口調で続けた。「私が勝った場合には、飲み込むことと顔にかけること、このどちらかを褒美として頂戴せねばならんのだ。勝負の前に、自分で選ぶことにもなっておる。きのうは飲み込ませてもらったゆえ、きょうは気分を変えて、顔にかけて欲しいと望んだのだ。もうよいか? そろそろ始めたい」「あとひとつ、そなたが負けた場合はどうなるのかな?」「それは、……仕置きを受けることになっておる」「どのような?」「聞かずともよかろう。私はもう負けはせぬ。よってその問いは無意味だ」 苛立つアリシアに、横からスカトンスキィが言う。「このところの連勝で気分をよくしておるようですな。アリシア将軍。しかし我らガドーラの者の問いにはすべて正直に答えるとの約定、これを違えれば、それもまた失態のひとつとなりますぞ」