「そう思うと、ますます前世はイギリス人だったのかも、なんて……」 だが、いつの間にやら、初音さんから優雅さが失われている。 よくわからない変化だが、今日俺がここに来た理由を見失っちゃいけない。「あの、初音さん……」「……緑川くんは、小松川さんの、お孫さんなんですって?」「!」 例の発言の裏を確認しようとしたのに、初音さんに先を越されちゃいましたわ。 真之助さんと俺の血縁関係は、わざわざ言うことじゃなかったし、俺からは言ってないはず。琴音ちゃんが教えたのかも。 初音さんが、悲しそうな目をしつつ言葉を続けた。「……じゃあ、ひょっとして、私が琴音とこの街に流れ着いた時のこと、聞いてるかな?」「……」「……そっかぁ……」 無言は肯定に他ならない。なんとなく初音さんは悟ったようだ。 まあ昨日聞いたばっかなんだけどね。「ならね、緑川くんに、知ってほしいこと、あるの」「知ってほしいこと、ですか……?」 当社比で、すっごく空気が重い。 いや、もう覚悟は決めましたよ。即決で。 大丈夫、馬場先生との修羅場もちゃんと切り抜けてきたじゃないか。俺はやればできる子。 ──とかタカをくくってたら、いきなり重い言葉で殴られた。「……琴音は、私の不義の証」「……はい?」「琴音はね、私が不倫の末に、身ごもった子だったの」「……」 タイムラグ。「はいいいいぃぃぃぃ!?」 オトナの事情をなんでこんな量産型高校生に話すんですか、初音さん。 いや確かに興味がなかったわけじゃないけどさ。 あ、そうだ。作者に忠告。 次の話を重くするなよ、するなよ、絶対にするなよ!