「――って言いたいけど、それは無理」「え!?」 アリスさんの誘いに俺が了承すると、何故かアリスさんが否定した。 一体どういう事だ? 何が無理なんだ? やっぱり、平等院システムズの社長でもあるアリアを怒らせたからか……?「カイは紫之宮財閥について、どれだけの事を知ってる?」 俺が否定された理由を考えていると、アリスさんが紫之宮財閥について聞いてきた。 紫之宮財閥――平等院財閥や西条財閥と並ぶ日本三大企業の一つ。 ただ紫之宮財閥は、現社長である紫之宮社長と娘さんである紫之宮愛さんの仲が良くないと噂されていて、内部分離しているのじゃないかと言われている。 しかし、その愛さんという方が凄く優秀な人らしく、内部分離していたとしても成績は鰻登りらしい。「あまり良い噂は聞きませんね。紫之宮社長は取引企業に無茶な要求をのませているという噂も聞きますし……。まぁ娘さんである、愛さん自身についての噂は良い噂を良く聞きますけど、その程度しか知りませんね」 残念ながら紫之宮財閥の仕事は請け負った事がないため、俺が答えられるのはこれくらいだ。「そっか……。実は、その紫之宮財閥にアリスやカイと同い歳で、凄い男が味方についた。それにより、そう遠くない未来に日本三大財閥の均衡は崩れる」 日本三大財閥の均衡が崩れる……? いや、それよりも、俺達の年齢でそんな男が居るなんて噂、聞いた事がないぞ? 一体どんな奴なんだ……?「クロは頭がキレるけど、それ以上に相手の心を理解する事が出来る。そして、自分の要求を相手にのますと同時に、相手が望むことも出来るだけ叶える事が出来る。だからクロは味方を増やせるし、その味方に付いた人達はクロの為に頑張ろうとするから、大きな成果をあげることが出来る」「ちょ、ちょっと待って下さいよ! いきなりなんでそんな話をされてるんですか? もしかして、その男はアリアみたいに攻撃的な性格をしていて、平等院財閥か西条財閥に仕掛けてくるんでしょうか?」「ううん、違う。クロは凄く良い奴。そう――人格破綻者のカイとは違って」「おい……!」 何故このタイミングでこの人は俺をディスるんだよ! 今真面目な話をしてるんじゃないのか!「まぁ、冗談はさておき、クロが何も仕掛けてこなくても、紫之宮財閥が勢力を増せば、こちらの仕事が自然に奪われるようになる。だからこのまま行くと、日本三大財閥の均衡は崩れる」「……その、味方につけるってのはどういう感じなんですか?」 俺はアリスさんの言っていた事でイメージが上手く浮かばなかった部分を尋ねてみる。 交渉が上手いタイプの人間なのだとは思うが、味方につけるというのが利害関係とかであれば、難しい事では無いと思う。「クロはアリアに交渉した時も言葉を巧妙に操って、まるでアリアがクロからアリアに有利な条件を引き出したように演じて見せた。それによってアリアは凄く満足してたけど、それは予めクロが用意していた内容で、クロにとっては普通に提示できたけど、アリアが敵にならない様にアリアの掌の上で転がってるように演じて見せたという事。そして先日、あの紫之宮財閥の社長を改心させたという情報を、ニコニコ毒舌が得てる」「あの紫之宮社長を改心!?」 人を食い物にしか見ないあの男が改心しただと!? 一体どうやったらそんな事が出来るんだ!? しかも、アリアを敵に回さない様に、アリアが条件を引き出したように見せるなんて……。 本当に俺と同じ高校生かよ……。