「どうしたのお兄ちゃん?」 俺が今にも通報しそうになっているおばさんを見て冷や汗をかいていると、桜ちゃんが心配そうに見上げてきた。 ……この子は、周りの声が聞こえてないのだろうか? そういえば、前学校で注目を集めている時も、この子一切気にしてなかったな……。「な、なんでもないよ……。それより、早く行こうか……」 早く立ち去った方が良いと判断した俺は、桜ちゃんにギコチナイ笑顔を向け、目的のとこに向かうのだった――。 2「わぁ――!」 目的地に着いてから少しして、桜ちゃんがそんな感嘆の声を上げた。 俺達は現在、桜ちゃんの希望で動物園に来ていた。 動物園がいいだなんて、桜ちゃんは本当に可愛いなぁ……。 俺は、目をキラキラさせながら猿の集団を見ている桜ちゃんを見て、心が満たされていた。 猿の可愛さはイマイチわからないが――こんな桜ちゃんを見るだけで凄く来て良かったと思う。 俺は動物自体はそこまで興味がない。 猫は凄く好きだが、他の動物はあまり好きじゃない。 そういえば――保育園の時に出張動物園が来た事があって、その時リスを抱きかかえた事があるんだが、持ち上げた瞬間指を思い切り噛まれて痛かった記憶がある。 あの時、早くして『可愛い者は油断できない』という事を知った俺であった。 ……まぁそういう意味で有れば、このニコニコ笑顔でくっついて来てる天使も、絶対に油断できない存在だ。 気を抜いて下手な事を言えば、思わぬ地雷を踏みぬいてしまい、ニコニコ笑顔の悪魔が降臨なさる。 それにこの前知った事だけど、この子は人懐っこい顔をしているのに、話しかけてきた人から逃げる習性があるらしい。 まるで本当に猫みたいな子である。 桜ちゃんに学校で話しかける事が出来た者は、それだけで周りから良い奴認定されるとかなんとか……。 桃井にしろ、桜ちゃんにしろ、この姉妹は何か学校に言い伝えを残さないと気が済まない生まれなのだろうか……?「お兄ちゃん、パンダ見に行きたい!」 そう言って、桜ちゃんが俺の腕をクイクイっと引っ張っていた。 ……本当、マジでこの子可愛い……。 俺はそんな可愛くおねだりしてくる桜ちゃんに終始デレデレだった。 まぁそれはさておき、この動物園は先程桜ちゃんが言ったようにパンダが居る。 ……いや、だからこの動物園に来たんだけどな……。