「兄貴~。エルパープルの蹄鉄なんすけどぉ――あれ?」 セカンドが去った直後、食堂に馬丁のプルムが現れた。兄貴分の馬丁頭ジャストを訪ねてきたようだ。「何か……すっげぇ静かっすね?」 今までにも度々訪れていたプルムだからこそ分かる違和感。確かに食堂は普段と違って明らかに静かであった。「ああプルムか。今よォ、セカンド様がいらしてたんだ」「マジすか!? ご主人が!?」「おう。しばらく雑談してくださってよ……いやァ、最高だった」「うわぁ、兄貴が見たことねーくらいだらしねぇ顔してる……」 プルムはジャストから目を逸らし、食堂を見渡した。食堂には同じく「ほわぁ~」とした顔の隊長クラスのメイドが数人、そして何故かタバコを見つめてニヤニヤしている料理長ソブラの姿があった。「ソブラ兄さんはどうしちゃったんすかあれ」「良いセンスだって褒められて調子乗ってんだよ。ありャしばらくダメだ」「聞こえてんぞジャストこら!」「うわァ! すんません兄さん!」 ジャストが反射的に謝る。プルムも一緒になって謝ったら、一瞬で許された。「マジっすね。すんげー機嫌良いじゃないっすかソブラ兄さん」「おう。いつもなら一時間みっちり説教コースなのになァ」 こそこそと喋る二人。確かにソブラはおかしくなっていた。否、食堂にいた者は全員が大なり小なりおかしくなっていた。 4ヵ月経って初めての主人との時間。誰もが心待ちにしていたがゆえに、まだ心の準備ができていない状態でのサプライズ対面は破壊力抜群だったのだ。「……皆、大好きなんだなァ。あの人のことがよォ」 ジャストは呟く。改めて湧き上がる強い気持ちは、食堂にいる皆が同じであった。「それにしても兄貴はそこそこ普段通りっすね? 流石、兄貴っす!」「いや、俺さァ……喋ってもらえんかった……」「あっ……」「てめェ! アッてなんだアッて!」「ひいぃすんません!」「ったく舐めやがって。あァん? 最近だらしねぇな、プルムよォ。こりゃあちょいと教育が必要かな?」「ぎゃあ! それだけは勘弁を!」「嫌だべんべん」「ひぇえええっ!」