《暗黒魔術》の再使用クールタイムは3600秒。あと1時間は使えないが……向こうの指揮官にとっちゃ、知る由もない事実。次、いつまたあの恐怖の霧が来るかと思うと、逃げ出さずにはいられなかったのだ。「嗚呼、可愛いわぁ。ほらほら、もっと逃げなさいな」 あんこは影杖を《暗黒召喚》し、びゅんびゅんと振り回す。弾かれた砂利が恐ろしい勢いで飛び、バシバシと彼らの鎧に当たった。あんこの声も、飛来する砂利の音も、杖の振られる音でさえ、彼らには身震いするほどの恐怖でしかなかったことだろう。「頃合か」 援軍全体が撤退を始めた様子を見て、あんこに合図を送る。次の瞬間、俺はあんこの胸の中にいた。ちょっ……どうも格好がつかない。まあ致し方なしか。「しかと見よ!」 俺は一番目立つであろう【魔術】《雷属性・伍ノ型》を準備し、奴らのケツすれすれを目がけてぶち込んでやる。伍ノ型はまるでミサイルのように高速で飛んでいき、地面に着弾した。 バリバリバリ! と、積乱雲の中の如く電撃がその場で荒れ狂う。夜にも関わらず、その周辺はディスコのように目がチカチカするほど強い光が明滅し、一帯に爆音が響き渡った。 何事かと、敵軍から注目が集まる。俺は大きく息を吸って、沈黙を破った。「セカンド・ファーステストだ! 俺の名を忘れんなよクソッタレども! 今度また調子乗ったことやってみろ! ただじゃ済まさねえぞ! カラメリアについても知ってるからな! 舐めんじゃねえってクソカス神とやらに伝えとけ! 分かったらとっととお家に帰ってママのおっぱいでも吸ってな! あと捕虜返せバーカ!」