こういう時は缶コーヒーだ。甘い砂糖の味がストレスを軽減してくれる。 側にいる、ニャメナにも缶コーヒーを勧めてみたが、気味悪がって飲まない。 そこへ崖の上から、ミャレーとベルが戻ってきた。「にゃー! あれ? どうしたにゃ?」 うなだれている俺に、おかしいと思ったのだろう――彼女に事情を説明した。「あーにゃんだー獣人以外の人の、あの日かにゃー」「そういえば、獣人はあるのか?」 つい聞いてしまったが、こりゃセクハラかもしれん。だが彼女達があっけらかんと、俺に答えを返してきた。「ないにゃ」「ないのか?」「ああ、ないねぇ。旦那、賢者のくせに、そんな事も知らないのかい?」 だって賢者じゃないしな。それに他の世界からやって来た人間だし。 2人の話では、獣人に月のものはない。ただ、年に1回発情期のようなのが1週間程あって、その時にやると100%出来るらしい。 もちろん、獣人同士だけだが。普通の人間とは混血は出来ない。「それじゃ、一斉に赤ん坊だらけになったりしないか?」「その時期はバラバラに来るから、それはないにゃ」「そうか……」 2人と話していると、アネモネが家から走ってきた。 プリムラから説明を受けたせいか、それとも鎮痛剤が効いているのか、彼女の顔はいつものように明るさを取り戻している。「ケンイチ!」 アネモネが俺に飛び込んでくると、その後から、プリムラもやって来た。「プリムラから、話は聞いたかい?」「うん! 私、赤ちゃんが産めるようになったんだって!」「そうだ、今日はお祝いをしないとな」「うん! 私、ケンイチの赤ちゃんが欲しい!」 俺は家に戻るために、飲みかけの缶コーヒーを空にしようと口をつけていたのだが、それを吹き出した。「ゲホッ! ゲホッ!」「どうしたの? ケンイチ」「ゲホ――まぁ、アネモネ落ち着きなさい。そりゃ確かにその通りなんだが、君のその小さい身体じゃちょっと無理だ。もっと大きくならないとな」「じゃぁ、どのぐらい?」「そうだなぁ……後、5年ぐらいは……」「そんなに?」「だって、胸も大きくならないと、赤ちゃんに乳もあげられないし……」「まぁ、アネ嬢。旦那の言う通りだな。もうちょっと待った方がいいと思うぞ」 大体12歳ぐらいから働き始めるこの世界だが、さすがに結婚して子供を産むのは15~17歳が多いようだ。