などと、簡潔な二文字が記載されていた。そして、新たに補助技能枠という表示もされており、マリーと同様に技能を割り振れるらしい。ただし、こちらはひとつきりだけど。 すぐ隣から覗き込んでいたウリドラが、楽しげな声を漏らす。「ほう、やはり会得しおったか。これはのう、決められたあいだだけ時間を凝縮するものじゃ。なかには人の身でありながら倍速で動き続けた者もおったらしい」 はあ、という気の抜けた声が漏れてしまう。 能力とは降って沸いてくるものではない。元から素養があり、何かしら掴んだ場合にだけ会得できるのだ。先ほどの悪魔との戦いでは最後の最後にこの存在を僕は掴み、そして撃破できたように思える。「ありがとう、ウリドラ。あの戦いのとき、助言をしてくれたでしょう」「ふむん、なんのことやら分からぬのう。じゃが、活かせるかはおぬし次第である」 黒曜石じみた瞳がこちらを向き、にまりと微笑む。マリーと同じように可愛い生徒であり、そして期待してくれているのだろう。 いまにして思えば、彼女との訓練のときから導かれていた気もする。そういう意味でも、僕にとってもったいないほどの師だ。「悩むなあ、補助技能枠に何を入れようか。やっぱり加速かな。でも武器が無いと発動できないし……ううーーん」「あなたの場合は体力が重要なのだし、こっちの『スタミナ』も良いかもしれないわよ。というよりもレベルアップしたのだから、まずこの技能と入れ替えたらどう?」 などと技能のひとつにある「釣り」を指差されてしまった。 いや、待って欲しい。分かる、分かるよ。迷宮踏破のためなら「釣り」なんて技能は不要だろう。しかしだね、最近でこそ出番は少ないが、ゆったりと釣りをして過ごす時間はとても楽しいのだ。 などと説得をしようと試みたが、やはり2人から興味のなさそうな目を向けられてしまう。「……あなたって、こういうときだけ口が回るのね。なんだか言い訳しているみたいだわ」「本当じゃのう。珍しくて話し終えるまで聞いてしもうた。よほどやましいと見える」 あ、これは無理だねぇ。女性2人を相手に説得できるなんて思った僕が甘かった。 そういうわけで、泣く泣く入れ替えを……しようかと検討することにした。「ああ、もう、じれったいわね。はやくその決定ボタンを押しなさいよ。なんなら私が手伝ってあげるから」「やめてやめて、もう少し悩ませて。本当に思い出深い技能なんだ」 などと後ろから指をグイグイ押されて慌ててしまったよ。ずっと前は、これのために夢の世界へ来ていたところもあるからね。 まあ、技能の入れ替えは困ったときに入れ替える事も出来るので、もう少し悩むとしようか。