そんな俺の様子を白い目で見つめるチェリちゃん。ちょっと見た目が良いからって実力もないのに調子に乗って……ってな感じだろうか。彼女は分かり易くて良いな。 ……やはり、講師としてスムーズに活動するには、その実力とやらをこれでもかと見せつけた方が良いのかもしれない。昨日のあれで理解してもらえないのなら、もう四大属性の伍ノ型をぶっ放しまくるくらいしか思い付かないが。 と、俺がそんなことを考えていたら、ゼファー団長がおもむろに口を開いた。「分かった。儂が指示を出そう」「団長!?」「チェリ。この小僧の実力は本物だ。いい加減、認めるのはお前の方だ」「そんなっ……」 チェリちゃんは味方だと思っていた団長に突き放されて愕然とする。ガーンという効果音が聞こえてきそうな顔である。「これより平常通り訓練を行う! 講師殿が訪れた際は質問への応答を優先するよう! では開始せよ!」 団長の一声で、それまでやる気のなさそうだった第一宮廷魔術師団の皆がきびきびと動き出す。それはチェリちゃんも同様であった。流石は団長、団においてはその命令は絶対なんだな。 しかし小僧と呼んだり講師殿と呼んだり、団長も一苦労だな。きっと昨日の俺の「55年間の無駄を云々」という口撃をまだ根に持っているんだろう。確かに言い過ぎた気もするが、事実っちゃあ事実だから今のところ撤回するつもりもない。その天狗の鼻がへし折れてからなら謝ってもいいかな。 ……で、数時間後。 単刀直入に言おう。「だめだこりゃ」 宮廷魔術師団。王国屈指の魔術師がどれだけのもんかってのを、俺も少しは期待していたんだ。昨日の時点で殆ど答えは出ていたが、それでも万が一、億が一ということもあるから。 それがどうよ。「お遊戯会かな?」というのが正直な感想だ。「宮廷魔術師ってのは戦争に駆り出されることもあるんだろ?」「そうだ」「魔術師で固まって動くのか? それともばらばらに動くのか?」「殲滅、遊撃、援護、補助。全てこなす」「テキトーってこと?」「違う。戦況に応じて形を変える」「ああ、だからか……」 彼らの訓練は、合図によって隊列を組んだり散ったり配置を変えたりと、そういったものがメインだった。「この合図ならこの陣形でこの魔術を使う」という戦法を何種類も頭に叩き込み、いざ戦場でそれをやろうというのだ。馬鹿馬鹿しいったらない。「肝心の魔術はどうしてる?」「個人でやらせている」「は?」「得意とする魔術は十人十色。足並み揃えて訓練はできん」「いやいやそういうことではなく。魔物は狩りに行かないのか?」「ぬ、経験鍛錬か。週に一度、鉱山や大森林へと狩りに出かけている」「へっ……? そんだけ?」「そうだが……何か問題があるのか?」