「ねぇ。お兄様。二等か三等が当たったら私に寄越しなさいよ」「嫌だ」「何でよ。いいでしょそれくらい」「私とて知りたいスキルはあるのだ。自力で頑張りたまえ」「……フンっ」「ぐワォ!? 何をする! 痛いではないか!」「お兄様なんて嫌いよ」「甘えん坊も大概にしろシェリィ!」「何ですってぇ!? いいじゃないお兄様はもう出場条件満たしてるんだから!」「今お前に足りていないのは経験値だろう! むしろ魔物の情報をくれてやるから二等三等が出たら私に渡せと言いたい!」「私だって他に覚えたいスキルあるのよ! そもそも召喚術だけじゃ限界感じてるのよ最近!」「私とて剣術だけでは駄目だと学ぶに至ったのだ! ここは譲れんッ!」「うはっ……同じテーブルの兄妹が猛烈にうるさい件……」 ランバージャック兄妹と同じテーブルにされたムラッティは、小声で呟きながら辟易していた。セカンドは良かれと思ってコミュ障気味の彼が比較的絡みやすいだろうグイグイ来るこの兄妹と一緒にしたのだが、完全に裏目に出てしまっている。兄妹がうるさすぎたのだ。間にメイドのマリポーサがいなければ、この兄妹はいつもこのような感じである。 だが、そのおかげかムラッティは平静を取り戻した。熟考の末、二等三等が当たった場合は魔魔術の習得方法を教えてもらうことに決め、後はひたすらに祈るのみだと、大して信じてもいないナントカ神にへーこら祈りを捧げる。「二等か三等、二等か三等、二等か三等……」 汗びっしょりの巨漢が体を縮こませ眼鏡を曇らせ鬼気迫る形相でぶつぶつと呟く様は、単純に表現して、キモい。「う、うわぁ……」「ううむ、流石に……」 気が付けば。ムラッティとシェリィとヘレスのテーブルは、若干一名の尋常ではない気合に押されてか、異様に静かになっていた。