なんていうか、アランって、ほかの女の子の時はちゃんとしてるのに、リョウ嬢の前になると、なんていうか、こう、残念な感じになるような気がする……。「いや、本当になんでもないんだ。リョウの、その白っぽいドレスも似合ってる。白い……蚕みたいで!」 と、アランが慌てた様子で口にした。 蚕かぁ。さっきアランが言ってた白い芋虫を、ただ具体的な虫の名称に変えただけだよね……。「蚕ですか……」 アランのドレスの褒め言葉になんとも微妙な表情で繰り返すリョウ嬢。 ごめん、リョウ嬢。 僕がもう少しちゃんと言っておけば……。 そのあとは3人でとりとめのない話をして、リョウ嬢が別の人に呼ばれたこともあって別れた。 別れるときのアランの寂しそうな顔といったら、捨てられた子犬みたいな顔だった。「なあ、リッツ、やっぱりドレスの汚れなんかとったって、好きになってくれなさそうだったぞ」 リョウ嬢と別れて壁際に移動すると、アランはそんなことを言った。「いや、だからね、汚れを取ることが大事なんじゃなくて、それまでの所作というか、流れがいいって話なんだよ」「流れ……? まずは、ドレスを汚すところからはじめるってことか? リッツ、お前ってやつはすごいことを考えるんだな」「わざと汚そうなんて思ってないよ!」 見当違いなことを行ってくるアランに、僕はそう言ってため息をはいた。 僕の友人は、なんでこう、どこか残念なんだろう……。 まあ、でも、顔も家柄も性格もよくて、魔法使いとしても優秀で、女性の扱いもお手の物……そんな完璧な人間だったらこんな風に友人として一緒にいられなかったかもしれない。 少し残念な部分も含めてアランだし、それがなくなったらなんとなく寂しい思いをしてしまう気がする。「おい、リッツ、なんで俺の顔を見てニヤついてるんだ?」「いや、アランは面白いなって思って」「人の顔見て面白いとか失礼なんじゃないか……」 そう不服そうに答えるアランにまた笑みが溢れた。