あまりにも当たり前のように呼ぶから気にとめてなかったけど、初めて桜が海斗を呼びにきた時って、『神崎先輩』って呼んでたよね? そもそも兄妹でもないのに、『お兄ちゃん』って呼ぶこと自体おかしいし……。 あれ……なんだろう……? なんだか凄く嫌な予感がする……。 とりあえず海斗には悪いけど、調べさせてもらおう……。 私はもっと早く気付かないといけなかった事があったような気がして、次の日には行動に移す事に決めるのだった――。2 アリアと決着をつけた次の日――俺はアリスさんが来るのを、家のリビングで待っていた。 ……なんであの人、わざわざ俺の家に来るって言い出したんだよ……。 事前に『決着がついた次の日に、話したい事があるからまた会いたい』という連絡は、数日前からもらっていた。 しかしそれは、てっきり取引をした所で会うものだと思っていたのだが、昨日いきなり俺の家に来ると言い出したのだ。 父さんと香苗さんは、昨日から新婚旅行として一週間の海外旅行に出ているし、咲姫は明日から二泊三日の生徒会の研修合宿があるから、その打ち合わせとかもかねて今日は朝早くから学校に行っている。 だけど――まだ家には、桜ちゃんが居た。 それなのに俺がハーフの金髪女子なんて家に入れてしまえば、桜ちゃんから疑惑の目を向けられかねない。 あの子の地雷原を未だに把握していない俺は、アリスさんが家に来る事を拒否したかった。 俺がアリスさんにそう伝えると、『気にしない。むしろ面白そう』と、アリスさんから返信が来た。 ……あなたが気にしなくても、俺が気にするんですが!? てか、面白そうってなんだよ!? あの人俺が困る事を楽しんでるだろ!? ピンポーン――! 俺が今日という日をどう乗り切るか考えていると、どうやらアリスさんが来たようだ。「宅配便かな?」 俺の横でテレビを見ていた桜ちゃんが、玄関に向かおうとする。「あ、桜ちゃん、俺が出るから良いよ! 何か重たい物だったら困るし!」 俺が桜ちゃんを呼び止めると、桜ちゃんは一瞬俺の顔を見て、すぐに笑顔で頷いた。「――はい」「こんにちは……来たよ……」 俺が玄関のドアを開けると、気怠げな雰囲気のアリスさんが立って居た。 その後ろには、リムジンが停まっているのが見える。 やっぱり、お金持ちはリムジンに乗ってくるんだな……。「入れて」 俺がリムジンを見ていると、アリスさんが俺の服の袖をクイクイと引っ張って、そう促してきた。