…………えぇ……この子なにしてんの……? 段々頬が膨れ上がってきたと思ったら、なんだか自分でクリームが付いたフォークを、わざと唇の横に当てたように見えたんだが……? そのせいで、口元がドロドロになっている。 仕方ないな……。「桜ちゃん、ちょっと食べるのやめて」 俺がそう言うと、桜ちゃんが笑顔で食べるのをやめた。 ……なんで、さっきまで頬が膨れ上がってたのに今度は笑顔なんだ……? まぁ、機嫌がよくなったなら別にいいか。 それよりも、口元を拭いてあげないと――。「――はい、桜ちゃん、もういいよ」「ありがとうお兄ちゃん!」 俺がそう言うと、桜ちゃんは礼を言って、ニコニコの笑顔でスパゲッティをゆっくりと食べだした。 そろそろ速いペースで食べるのに疲れたのかもしれない。「微笑ましい兄妹ね~」「妹さん、よっぽどお兄さんの事が好きなのね~」 俺が桜ちゃんを見ていると、なんだかそんな声が聞こえてきた。 今さっきのってただ口元を拭いてあげただけなのに、なんで桜ちゃんが俺の事を好きだって事になるんだろ? 桜ちゃんが俺に口元を拭くことを許してたからか……? ――俺は周りの声を、そんな風に疑問に思うのだった――。2 ――午後からはゲームセンターに来た。 とは言っても、別にゲームをしに来たわけではない。 なぜなら、桜ちゃんはあまりゲームをしないからだ。 だけど、プリクラを撮りたいらしく、ゲームセンターに足を運んだという事だ。 ……プリクラって懐かしいなぁ……。 あいつと遊んだ時は、あいつの要望で絶対最後にプリクラをとってたもんな……。 俺はプリクラ機の中に入ると、今はもう会う事が無い春花の事を思い出していた。「――お兄ちゃん、ポーズポーズ!」 俺が渡したお金を入れて設定をしていた桜ちゃんが、そう言って俺の腕に抱き着いてきた。 どうやらプリクラを撮る準備は終わったようだ。 ……というか、なんで当たり前にこの子は腕を組んでくるのだろう……。 いや、もう俺としては結構慣れてきていたのだが、なんだか慣れだしたのが逆に怖くなってきた……。 それからはプリクラ機の合図通りに、写真を撮っていく。 ただ、桜ちゃんは色々と可愛くポーズを変えていたが、俺はただピースをしているだけだった。 ……だって、こういうのでポーズを色々するのって恥ずかしいじゃないか……。 そして何枚か撮った後、一回プリクラ機の外に出て、桜ちゃんはコスプレ衣装に着替えに行った。 当然、俺は勘弁してもらったが……。 というか、普通にコスプレをしに行った桜ちゃんに驚きだった。 あまりそう言った事には興味がなさそうだったからだ。