「しくしく、しくしく」「……で、何あれ」 夕方に帰宅すると、昨日と同じようにシルビアがソファに三角座りで嘘泣きしていた。「ボスまでは無傷で行けたらしいのですが、ボスの岩石亀が話にならなかったと」 ユカリは説明を終えると「やれやれ」という風に首を振り、家事へと戻っていった。 なるほどな。しかし2日でボスまで辿り着けるようになるとは、予想以上だ。 声をかけようと近付くと、シルビアは顔を伏せたままぴくっと反応を見せる。「最初はエコのパリィと私の削りで倒せると思っていたのだ……」 こちらから聞くまでもなく何か語り出した。「だが、パリィしているだけだとターゲットは攻撃している私に向くのだな。エコを無視した岩石亀にそのまま突っ込まれてジ・エンドだ」 あちゃあ……。「そりゃ仕方ないな。次、岩石亀とやるとしたらどうする?」「うーむ……エコが銀将盾術のパリィを繰り返して反撃効果で倒すくらいしか思いつかん。もし岩石亀がダメージ量の多い方を狙う習性があるのなら、エコの反撃ダメージを上回らない程度に調整しつつ私もダメージを与えるくらいか」 ……うん。まあ、上等だろう。俺が教えたかったことは、大方理解していると見た。「シルビア、エコ。よく頑張った。ご褒美あげちゃう」「ほ、本当か!?」「いいのっ!?」 どよーんとしていた空気が、一気に華やぐ。 俺が頷くと、二人は「やったーやったー!」と大はしゃぎする。「明日はショッピングだ。ユカリも来るだろ?」「よろしいのですか?」「ああ、たまには息抜きしないとな。それに……二人にとっちゃ最後の休息だろうし」「む? セカンド殿、今何か言ったか?」「いや別に」 冬季タイトル戦まで、あと3週間。