んぐんぐと噛むような素振りを見せて、目を真っ直ぐの線にさせている。たまらず少女は身悶えて、声にならない悲鳴をあげた。(ふあっ! きゃわわっ! にゃーーん!) 決して起こさないようにしているのだろう。へにゃりと長耳を垂らし、ぶるっと両肩を震わせる様子は僕にとって堪らない。 おいでおいでと手招きをされて顔を近づけると「可愛いわねぇ、なんという寝顔なのかしら」と興奮冷めやらぬ様子で報告をしてくれる。 うーん、腰がムズムズするくらい可愛らしいエルフさんだ。にんまりと頬が緩んでしまうのを僕は感じた。 そして僕は静かに立ち上がる。ベッドのそばにあったクッションを掴み、ぽいぽいとフローリングに放る。あっという間に陽当たりの良い読書の場所が出来上がり、それからマリーを手招きした。 その顔は「起こしてしまうわ」と言いたげだけど、構わずに手招きをし続ける。 確かに起こしてしまうけど、人も動物も実は一番心地好さそうな場所に弱いんだ。 花ちゃんと離れてしまい渋々という表情で、ぽすんとマリーはクッションに沈む。やはりと言うべきか、眠たげで重い身体をのそのそと揺すって花ちゃんは歩み寄ってきた。 良いかしら? そう言うように子犬は小首を傾げ、少女はにっこりと微笑みを返す。ただそれだけで通じたのか、真っ白な太ももに頭を乗せて、すうーと花ちゃんは寝息をたてた。 ふあああーー! そんな悲鳴混じりの顔で見上げられたら僕だって堪らないです。くいくいと何度も袖を引いてきて、今すぐに耳打ちをしたいらしい表情こそ僕にとっての弱点だ。くすぐったくも「可愛い!」と報告してもらえて、もしも僕に長耳が付いていたらヘニャリと垂れていたに違いない。 どうやらこのときから窓辺のフローリングは、読書における特等席に変わったらしい。ほくほくとした満足そうな少女の顔を見て、そのように僕は思う。