電話の向こう、理恵さんの声が嬉しそうに弾んでいて……その瞬間、私に予感が走った。「もしかして、理恵さんも?」「ふふ、わかる?でも、それだけじゃないのよ」 理恵さんの声が嬉しそうに弾む。もうそれだけですべてが伝わってきた。「理恵さん、優子ちゃんと一緒に妊娠したんですね」「うん。そうよ。私たちも今日産婦人科に行ってきたのよ」「おめでとうございます」 私たちはお互いの妊娠を喜び合った。 大家さんは本当に私たち三人一緒に妊娠させるてくれた。 さすが大家さん、なんて感心したんだけど、後で聞いたら最高8人同時に妊娠させたことがあるらしい。本当に大家さんってすごい……。 これが私の最初の妊娠のお話……それから約三年。 不意に鳴った携帯電話に表示された発信者の名前に思わず笑みがこぼれてしまう。表示された名前は『飯田理恵』 私にとって先輩であり、親友であり、憧れの尊敬すべき女性。「こんにちは、有希さん」「ええ、理恵さん」 私は何日かぶりに聞く理恵さんの声に弾んだ声で返事を返していた。年齢的には私の母よりも少し若いだけで私とは母娘といってもいい年齢差なのに、容姿は実年齢よりかなり若いし、一緒に歩いていると母娘というより少し年の離れた姉妹にしか見えない。 そんな理恵さんと一緒に妊娠して産んだのが今私の足に抱きついて甘えている二歳になったばかりの長女の『優理』。理恵さんと優子ちゃんと一緒に妊娠した思い出を大事にしたくて、二人の名前から一文字ずつもらって『優理』と名付けた。 余談だけど去年の一歳の誕生日を祝って、理恵さんと優子ちゃんの子供たちと一緒に優理の一歳の誕生パーティーをした。 実際に生まれた日は確かに違うけど、大家さんに種付けしてもらって卵子が受精した日は同じ日だったし。そういう意味じゃ誕生日は同じと言っていいと思うしね……なんてことを話しながら理恵さんと優子ちゃんと女三人で盛り上がっていると、横にいた私たちの夫が『そういうものなのか?』と苦笑していた。 とりあえず三人で『そういうものなの!』と言って黙らせておいたけど……ま、夫たちが働いてくれるおかげで、私たちは大家さんと子作りに励めるんだからすぐに許してあげた。 まぁ、そんな夫婦の様子を見ていた大家さんが『皆さん、本当に夫婦仲がいいですね』なんて言いながら微笑ましく見ていたのは少し恥ずかしかったけど。 あ、それと私の夫について説明しておかないといけないわね。 私の夫は翔太くん……夫に対して「くん付け」は変だと思うかもしれないけど、呼び捨ても変だし、「あなた」と呼ぶのも似合わないのでずっと「翔太くん」って呼んでる。