第9章 その後の処理前回、皐と話をしてから、しばらくの時間がたった。すっかり忘れていたが、弁護士費用は、完全に終わってからの請求なので金銭のやり取りは無い。皐には、着手金と幾らかの現金を貸しただけだったが、身体の関係は続いている。「社長、明日で良いんで、夜時間ありますか?」皐が予定を聞いてくる。「あぁ、大丈夫だよ。」娘さんの話なのは予想できる。「それじゃ、勤務上がりでお邪魔します。」そう言って、皐は帰っていった。次の日、皐がやってきた。何処と無く表情が暗い。話が上手く行っていないのか?「お疲れ様。上、上がろうか。」私は倉庫に誘う。お茶を用意し、テーブルを挟んで向かい合って座る。皐が話始める。「先日の・・娘の事ですが・・相手の所でお世話になる事が決まりました。」ん?弁護士が付いているのに?親権は向こうなのか。「・・親権を一番に考えていました。弁護士さんも頑張ってくれました。・・・でも、私から親権を渡しました。」涙をこぼしながら、うつむいている。「どうして?何か有ったの?」私は聞いてみた。「・・はい。実は・・・」話を要約すると、こう言った事らしい。向こうの嫁さんは、先天性の疾患で子供が望めない。元夫は皐の事を悪く言っていたみたいで、向こうの親族からは敬遠されていたらしい。虐待とか、色々と嘘を吹き込まれていたと。弁護士が介入したおかげで元夫の嘘がばれてしまい、両家の親から土下座を食らった。その時に初めて関係者一同と顔を合わせて、娘を正式に養子に欲しいと懇願されたらしい。皐は、相手の嫁に同情してしまい、嘘により傷つけられた名誉の復権と娘さんとの無条件の面会権、娘さんに不測の事態が有れば親権は皐に渡す事を条件に、相手に親権を渡したらしい。結局、向こうの両家から、弁護士費用+αの慰謝料と、それとは別にお金が振り込まれたと言っていた。勿論、養育費は皐が支払う。相手からの慰謝料で相殺も出来るのだが、娘さんとの繋がりを考えての事らしい。話し合いの最中、元夫は完全に空気だったみたいだ。「そうだったんだね・・・でも、皐が考えて自分で答えを出したんだ。それが最良の答えだと思うよ。元夫さんの事は、悪く言いたくは無いけど加害者だよね。」私は何故か、皐の元夫が許せない。皐に酷い仕打をした事なのか、自分が子供を作れない事なのか、若しくは他の要因なのか。良く解らないが、許せない。「・・ありがとうございます。社長にそう言ってもらえると気が楽になります。・・元夫は・・私自身も、何故あの人と一緒に居たのか解りません。今は嫌悪感しかないです。」元夫は許せないが、今は皐のケアの方が優先だ。「この際だから、言いたい事が有れば、全部言ってみなよ。楽になれるかも。私で良ければ聞いてあげるから。」皐は普段の生活の事や、今回の親権の問題、果てまでは、会社の賃金の事も話に上がっている。実は、わが社に新しい工場の建設の話が上がっている。用地の確保は出来ていて、銀行の融資審査が通れば新工場の建設を始める計算だ。その時に雇用体制や賃金も見直ししようと思っている。その話も皐には話をした。