「もしかして、仕入れか?」「そう! こんなお菓子とかランプとか仕入先が解んないよ。商売覚えるために、どこかに丁稚奉公するにも歳を取り過ぎてるし」「そうか」「でも、ケンイチは商売で成功すると思うな~今から愛人候補になっておくかな~?」「こんなオッサンは止めとけ。お前の親父さんと変わらん歳だろう」「父ちゃんいないし」「ああ、そうなのか……スマンな」 ヤバい、地雷だよ。「いいよ。ケンイチ良い人だし」 少々気まずいネタを振ってしまったので、誤魔化すために、彼女の似顔絵を描いてみることにした。商売は素人でも、絵は一応プロだ。 紙とペンで、クロッキー的な物を描き始めた。「アザレア。ちょっと動かないでくれよ」「なになに?」 10分程で、絵は完成したので、彼女に見せる。ランプに照らされて浮かび上がる、アザレアの肖像。「ええ~! 凄~い! 肖像画描いてもらえるなんて、本当に貴族様みたい~」 彼女は、絵を胸に抱えて、凄くはしゃいでいる。そんな喜んでもらえるとは、思ってなかったな。 喜んでいるのは良いが、何故かアザレアが服を脱ぎ始めた。ランプの光に浮かび上がる白い裸体。 くっきりとした白と黒の陰影が、ことさら肢体の形を際立たせている。 上着とスカートを脱ぐと、いきなり裸だったので、下着らしいものはこの世界には無いらしい。それ故か――街の女性は皆ロングスカートだったな。「おおい! 何をするんだ」「お菓子も貰って、肖像画も描いてもらったんじゃ、あたしが貰いすぎでしょ」 そうか? そうなのか? 異世界にやって来た早々、こんな事で良いのだろうか……。