皆の意見が一致し、トウエッドに向かう事に決めた俺たちは、その日はアジトの自室で休む事にした。 トウエッドにいるナツに、夜遅くに頼むというのも悪い気がしたしな。 俺とポチは自室のベッドに倒れ込むなり、すぐに意識を失ってしまった。眠るというより、そんな感覚だった。 それだけ身体に緊張状態を強いていたのだろう。「マスター! マスター! 朝ご飯ですよ! 朝ご飯の時間ですよ!」「うぅ、出来れば時刻で教えてくれポチ……」「この腹具合は……八時三十二分です!」 凄いな。体内時計の魔術と寸分の狂いもない。 一体どんな腹と感覚をしているのだろう、ポチは。「確か銀の皆とは、九時に待ち合わせだったか。……ふぅ」 身体を起こした俺は、ポチと共に身支度をして部屋を出た。 食堂へ向かった時には、既にブルーツが朝食をガツガツと食べていた。「よおブルーツ、おはよう」「おう! 今日から忙しくなんぞ! おめーたちの分も頼んどいたから食っとけ!」 相変わらずガサツそうに見えて律儀だな、ブルーツは。 俺とポチ、そしてブルーツが朝食を食べていると、ベティーとリーリアがやってきた。 そう、リーリアの登場は予想外だったので、ベティーと同室となったのだ。 何やら二人は楽しそうに話をしながら歩いて来る。夜の内に会話が弾んだのだろうか。 まぁ、ベティーなら誰とでも上手くやりそうではある。 少し間をおきブレイザーがやってくる。というか時間ピッタリだった。流石ブレイザー。真面目だな。「さてっと、げぷっ」「兄貴、汚い」「そうですよブルーツさ――けぷりっ」「ポチ、ばっちぃ」「「すみません」」 ブルーツとポチが謝罪を述べた後、ブレイザーが立ち上がる。「ナツが来る」 そう言って、ブレイザーは居住スペースの方を見た。 すると、トコトコという足音と共にナツが現れた。 その時、リーリアの表情がピクリと動いた気がした。「あんなに小さい子が空間転移魔法を?」「そうは言っても、確かナツももう十五になるんだよ。ジョルノとそこまで変わらないんじゃないか?」「……確かに、ジョルノが前線に出たのもそのくらいだったわね」「そうそう、そういう事」 まぁ、ナツは、フユや周りの十五歳の女の子よりかは少し小柄なのかもな。「ブレイザー! おはよう!」 とつんという音を聞かせ、ナツはブレイザーの懐に跳び込んだ。 仲良いよな、この二人って。「あぁ、おはようナツ」「ナツー、変わった事はあったー?」 ベティーはナツの頭をぐりぐりしながら聞く。「昨日ね、春華が大きな男の人たちに囲まれてね! 大変だったの!」 なんて危険なところなんだ、トウエッド。「でも全員を刀でずばばーって斬って丸裸にしちゃったの! あ、褌ってやつは残ってた!」 なんて危険なところなんだ、銀。「なーんだ。前にも似たような事あったじゃない? まぁトウエッドはまだ慣れない土地だし仕方ないかー」 ベティーはケタケタと笑いながら言った。 そうか、前にもあったのか。春華も成長したんだよなー。 皆の話じゃ銀のチームランクは既にSと言っていいレベルだ。 ナツもランクSの昇格審査が近いんじゃないかと話があるそうだし、皆、相当頑張ったんだろうな。「よし、それじゃあ行くか! トウエッドに!」 ブルーツの声に皆頷き、俺たちはナツが描いた空間転移魔法陣に乗った。 あれから五千年後のトウエッドか、これはちょっと楽しみになってきたな。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆「……ここは?」「首都エッドの宿の私の部屋だよー」 俺の問いに、ナツはそう答えた。「お待ちしておりました、アズリー殿」 部屋で待っていたのはライアンだった。「ライアンさん、他の皆はどうしたんです?」「エッドの冒険者ギルドで待機しています。私は別件でこちらに」 別件? はて、どういう事なんだろう? すると、ライアンはブレイザーに何か紙を渡していた。「後はリーダーのサインだけです。宜しくお願いします」「わかった」 ブレイザーはそれだけ言って、俺たちと別れてしまった。 どうやらライアンが渡した紙に、何か理由があるのだろう。