そして他人を食い物にしか見ない平等院社長は、平気でアリアを斬り捨てるだろう。 あのタイプの人間には自分の娘だから守るとか、そんな考えは無い。 その事は、過去にアリアがどんな育て方をされていたかを、前にアリスさんが教えてくれた事からもわかる。「そんな……そんな事って……! あぁああああああああああ!」 アリアは地面にひれふすような体勢をとると、悲鳴のような声を上げた。 アリスさんは黙って俺の事を見据えている。 その表情は先程の笑みも、怒りの感情も見えない。 ただただ、無表情だった。 本当に、この人は何を考えているのかわからない。 アリアがここまでされる事は、俺との決め事にはなかった。 なのにアリアに同情するような表情も、俺に怒ったような表情も見せない。 ……逆に、雲母はアリアを可哀想な目で見ていた。 散々雲母に酷いことをし、雲母の人生を奪ったと言っても過言じゃない事をアリアはしたのに、そんなアリアに同情出来る雲母は、本当に優しい奴なのだろう。 それに比べて俺は…………アリアのこんな姿を見ても、何も思わない。 むしろ、これが当然だとさえ思っている俺がいた。 桐山を見捨てた事が正しいと考えている、俺だ。 本当……どうしちまったんだろうな、俺は……。「カイ……取引をしてほしい……」 アリアが泣きじゃくっていると、アリスさんがそう言って俺に話しかけてきた。「その内容は?」「これから五年間……アリアが得た収入の半分を……西条の子に支払わせる……。それで……今回の事は全・て・……水に流してほしい……」「お、お姉ちゃん!?」「こうするしか……助かる手はない……」 アリスさんの突然の取引内容にアリアが驚くと、アリスさんはアリアの目を見てそう答えた。「なるほどな……」 俺はアリスさんの言葉に、考えるポーズを取る。 とは言え、この内容は元から決めていた事であった。 前に俺とアリスさんが取引をしたときに、俺が出した条件をのむ代わりに、アリスさんも条件を提示してきた。 それは――報酬をアリアの持つ株じゃなく、アリア自身に負担をさせる様に話を持って行く、口裏合わせをする様に――と。 会社の株だと平等院財閥にとって痛手になるが、アリア自身のお金なら、アリア以外は被害がないから良いらしい。 これはアリアに対するおしおきでもあるそうだ。 それに、大手グループの会社四つの社長を務めるアリアが得る収入は、かなり多いらしく、一年分の半分の額でも、十分な額になるそうだ。 ただ――確か話では三年分だったはずなのだが……。 まぁ多分アリアの身を守る為の取引なら、それだけの額が必要という事だろう。「それでいいか?」 俺は横に居る雲母にそう尋ねる。 なんせ今回の勝負は雲母がした事だ。 俺に決定権はなく、全て雲母が決めるのが妥当だろう。 一応、情報を得るために取引をしているから、その分の融通は利かせてほしいとは頼んではいたが。