パラパラと冊子をめくって少しだけ中身を確認するだけのつもりだったのに、私は夢中で物語の内容を目で追った。 このウヨーリと呼ばれている存在……もしかして?「もしかして、リョウ様は」 と私が言おうとすると、タゴサク殿は、微笑みながら首を横に降った。「それ以上先は口にしてはなりません。尊き方は、名を口にされることを嫌います。全ては、文字にてその神聖なる行いを記さないとならないのです」 その言葉を聞いて、私は冊子の後半のページを開く。 そこには『日、昇るところ、決して尊きものの話はするべからず。尊すぎるゆえの災いが降りかかる』という一文を見つけた。 その一文の付近には、ウヨーリ様の尊い行いを、まるで自分がしたかのように、自慢げに語る愚かな若者の口が爛れていくという話が収められていた。なんと恐ろしい逸話だろうか。