「おっ、良い食べっぷりだね。黒髪のお姉さん、こっちは味噌バターね」「待っておったぞーー! ほれ、ちゃんと後で交替せねばならぬぞ、マリー」「んぐっふふ(わかったわ)」 そうそう、プールあがりは味噌バターも良いね。 ふんわり香るバターは、これまた実に食欲をそそる。たっぷり盛られたコーン、もやし、それと柔らかそうなチャーシューにバターは絡み、食べる前から直感する。これは絶対に美味い、と。 ずぞぞぞっ。 黒髪の美女がためらいもなく麺をすするというのも、どこか変な光景だ。 切れ長の瞳をぱちりと見開き、ちょうど目があった僕へ「バター美味しい!」と無言で伝えてくる。 ずるいことに、ゆっくりとバターは溶けてゆき、途中で味に飽きないよう味をさらに濃くさせる。ある意味で計算された料理だなと感心させられるよ。 そして2人の欲望は一致し、それぞれのどんぶりを変えるとまた異なる味へ魅了される。「んふうーーっ、たまらないっ! なにこれなにこれ!」「うまいのうーーっ! 麺というのが、これほど風味あるとはのう。このこってりとしたチャーシューが実に良い仕事をしておる!」 くうう、とたまらなそうな顔をする様子へ、一番たまらなかったのは店員さんだった。これほど可愛らしい女性から、何度も手放しで褒められれば悪い気はしないだろう。それどころか、にやにやと頬を緩めっぱなしの調子だ。 ラーメン屋をやってて良かったぁ、という呟きが聞こえた気がした。「じゃあこっち、トンコツね。外人さんはみんなこれにやられてるから。絶対にハマるから食べてみて」「あ、やっと僕の分が来……」