そう伝えると、こくりとマリーはうなずいた。 たっぷりの余韻を残す作品のせいか、その体勢のまま夜遅くまで「どこが良かったか」を語り合うことになった。 たまには良いものだね、誰かと一緒に映画の世界から戻って来れないのも。 腕を枕に、たんぽぽの綿毛のような髪をした少女、マリアーベルはとろんとした瞳を見せてくる。 うつらうつらと船を漕ぎ、そして「すう」と息を漏らして夢のなかへと旅立った。 温かい体温と、静かに回る扇風機、そして布団のなかから響く猫のグルグルという音。夏を迎えた僕らの部屋は、たぶん季節に合わない快適さがあるだろう。 というよりも、こんな夏を僕は知らない。 普通ならどうにか眠りにつくため、ごろりごろりと寝返りを打ち続けるものだが。「まあ、僕の部屋にはエルフさんがいるからね」 おやすみなさい。 そう心の中で伝え、そして僕もいつの間にやら眠りにつく。 あとにはそう、どこかの部屋から響く風鈴の音だけが残された。