「にゃーん」「なぁ、お母さんもそう思うだろ?」 彼女の顎を撫でると、いつものように喉をゴロゴロと鳴らしているのだが、ちょっと様子が変だ。 すごく眠たそうな顔をすると、床へ身体を擦り付け始めた。「ベル? どうした?」 なんだか、マタタビを嗅いだ猫みたいな動きだが……。「それにしてもケンイチ。聖騎士とはなんなのでしょう?」「解らん。別に身体が変わった様子はない。直後は力が湧いてくるような感じはあったが、今は普通だ」「お姫様に聞くのが一番早いにゃ」「まぁそうだな」 皆で飯を食いながら話していると、メイドさんがやって来た。「あの、申し訳ございません。透明な四角い食べ物を姫様が大層お気に入りでして、手持ちがあれば追加をお願いしたいのですが」 透明ってナタデココか。シャングリ・ラから、缶詰を追加購入する。「ああ、2つぐらいでいいかな?」「ありがとうございます」 メイドさんが、缶詰2個を持って、走っていった。 もう全部食ったのか? 全然、弱ってねぇじゃん。タダの腹減りか?「ケンイチ、私もそれを食べたい」 アネモネがそう言うのだが、皆も食べたいようなので、ナタデココの缶詰を小鉢に開ける。 透明な四角い食べ物に、皆は興味津々だ。「まぁ! 不思議な食感!」「コリコリしてるね」「にゃー! 変な食い物にゃー!」「ケンイチ、これはどうやって作るのでしょう?」 プリムラが作り方を聞いてくるのだが、自作して売りたいのだろうか?「さぁ――これは自分では作った事がないな。確か木の実の汁を発酵させると固まる――だったはず」 ナタ菌って、南の島の門外不出の菌を使っているとか、ナタデココが流行った時にTVか何かで見たような。「こんな不思議な食べ物があるなんて……」「スライムが食えれば、こんな感じかもな」「「「えええ~っ!」」」 俺の感想に、全員が一斉に否定する声を上げた。「いくら悪食でも、それはないにゃ!」「そ、そうですわ。魔物は食べますけど、スライムはさすがに……」 ――とはいえ、皆スライムは食った事がないらしい。 RPG等で雑魚キャラのイメージが強いスライムではあるが、この世界では結構危険な生き物だ。 水と同化して音もなく近づいて捕食されるという。 だが、この世界に来てからスライムを見たことがない。ミャレーの話では――湿地帯等の水が淀んでいる場所に生息しているらしい。