あたいは負けた。完膚なきまでに。 ラズベリーベル様から教えを受けて、もう何ヵ月経っただろう。あたいの実力は、あたいの知る誰よりも高まったと、確信を持って言える。 【体術】も【剣術】も達人と呼べるほどのランクに上げて、そのうえ“神のスキル”《変身》も九段まで上げた。あのタイトル戦にさえ、こんなに強い17歳は出場しているワケがない。それくらい、あたいは強くなった。 なのに、負けた。 ……まだ、足りない。ラズベリーベル様の求める“救世主”には、まだ。 あたいじゃあ、駄目だった。あたいじゃあ、ラズベリーベル様を救い出すことは、できそうにない。 悔しい。 セカンド・ファーステスト。心強い味方ができたって、そう、わかってるけど、やっぱり、悔しい。 ラズベリーベル様が助かるなら、それでいいと思ってた。 でも、なんなんだい、この心のもやもやは。 嫉妬? 身勝手? 承認欲求? 不甲斐なさ? 利用されていることへの不満? わからない。自分自身のことが、全然、わからない。「あたいは一体、どうしたいんだろうね……?」 夜の森、独りで呟いてみた。 誰からも答えは返ってこなかった。