……世間が許さない行為を三つも犯した俺に、アリスさんは怒るだろうか……? 俺は今回、雲母を絶対に助けたかった。 それに俺の人生は、俺の周りに居てくれる人の為に使うと決めているから、俺自身がどうなろうと構わないという気持ちもある。 自分が人として最低な事をしている自覚はあるし、それで大切な人を守れるのならそれでいいじゃないかとも思う。 だけど――俺がやっている事は、本当にこれでいいのだろうか……? 大切な人達を助けたいからと言って、罪に問われる様な事をしてまで助ける事に、意味はあるのだろうか……?「海斗……?」 俺が一人悩んでいると、雲母が心配したような表情で俺の顔を覗きこんできた。「あ――悪い、なんでもない」 俺が咄嗟に誤魔化すと、雲母が一瞬顔を曇らせ、しかしすぐに明るい笑顔を向けてきた。「ねぇ海斗――結婚して!」 雲母は笑顔でそう言うと、俺の首に抱き着いてきた。「お、おい! なんでいきなりそうなるんだ!」「いいじゃん! 人生を賭けた戦いを共にしたんだから、もう私達は運命共同体だよ!」「意味わからねぇよ!」「えへへ――いいって言うまで、離してあげないもん!」 雲母はそう宣言すると、更にギュッと俺の首にしがみ付いてきた。 こんな事をしているせいで、周りからは何とも言えない視線を向けられている。 何より、俺自身が雲母にくっつかれて平静を保っていられなかった。 きっと雲母は俺が何か思い悩んでいたから、それに気遣ってくれたんだろう。 しかし――気遣うなら、もっとまともな方法にしてほしかった……。 結局この後はもう悩んでいた内容など忘れてしまい、雲母に振り回され続けるのだった――。