しばらくして、2人がバスローブを羽織って小屋から出てきたが、俺の顔を見た夫人は、そっぽを向いてしまった。 俺に無視されたので、彼女のプライドが傷ついたのだろう。「カナン様、この魔道具から温かい風が出ますので、御髪をお乾かしになって下さい。使い方は、プリムラが修めておりますので」 夫人はプリムラに任せて、俺達も風呂に入る事にした。 お湯が少なくなっているので少々足して、アネモネの魔法で再び温める。「まったく魔法ってのは、便利だねぇ」「獣人で魔法を使えるやつはいないのか?」「聞いた事がないよ。大体、字も読み書き出来ないんだからさ」「う~ん、そうか」 まぁ、適性があるって事だよな。皆で裸になって風呂に浸かる。「このお風呂は一緒に入れるからいいね!」「そうだな」 俺とアネモネ、隣では獣人同士が一緒に湯船に浸かっている。「おらクロ助、もうちょっと端へいけ、俺の長い脚が入らないねぇだろ」「ウチとそんなに変わらないくせに何言ってるにゃ。それなら、ウチの長い尻尾の方がはみ出るにゃ」 いつも喧嘩をしているように見える2人だが、意外と仲は良さそうである。 戻ったら風呂を作りなおすか。お湯もアネモネの魔法で沸かせるようになったしな。「でも、旦那ぁ。家の中を水浸しにしていいのかい?」「ああ、お湯を捨てた後で、アネモネの魔法で乾燥させればいいと思ってるんだが……」「なるほどにゃ」「多分、大丈夫」 アネモネもそう言っているし、多分大丈夫だろう。 しかし、これから1ヶ月間この場所で風呂に入るとなると、水の確保をしないといけないな。 この近くに川は無いようだし、水路の水源になるという、隣領の湖まで汲みに行かないとダメか。 距離的には20~30kmぐらいらしいから、数日に1回往復する羽目になるのかな……。 風呂から上がると、俺とアネモネはバスローブを着ているが、ミャレーとニャメナは裸のままだ。 そして2人は、ジェットヒーターの前で濡れた毛皮を乾かすためのダンスを踊り始めた。 彼女達は、そのつもりはないのかもしれないが――このダンスは、いつ見ても艶かしいんだよな。 するとニャメナが、足元の小石を拾って暗闇に投げつけた。「覗くなら、金持ってきやがれってんだ!」 辺りは暗くなっており、俺の目では解らなかったのだが、出歯亀がいたらしい。 アネモネの髪の毛も乾いたので、小屋に行くと――脱いであった夫人のドレスをアイテムBOXへ収納する。 次いで浴槽も収納して、中の水をゴミ箱へ捨てる。 シャングリ・ラでデッキブラシを買い、残っている水を部屋の隅に開いているハッチから追い出すと準備完了。 玄関と窓を全開にして、アネモネに魔法を使ってもらう。