私は、改めて、部屋の中にいる人たちの様子を見た。 みんな……ひどいケガをしている。 ここまで案内してきてくれた男性だって、脚を引きずって歩いていた。 もう、この村には、元気に動ける人がほぼいない。そう言い切ってもいいぐらいだ。 痛みや熱でうなされる声がそこら中から聞こえてくる。 そのうめき声の中に「ウヨーリ様、ウヨーリ様」となんのご利益もない偽りの天上の御使いの名前を呼んでいる声が聞こえてきた。 声のした方をみると、台のような木箱が目に入った。 その木箱に向かって、比較的軽傷の人が、膝をおって、手を合わせて祈るようにしていた。中には額を地面にすり付けている人もいる。 その木箱の上には枯れたたんぽぽが飾られていた。