違うの違うの、とマリーはかぶりを振る。 しかし、それを聞いた者たちは興味をさらに深めてしまうだろう。 なぜ大人しいマリアーベルは僕を殺したのか。 それは推理小説を紐解いた瞬間に似ているかもしれない。なぜ、なぜ、という疑問は膨らんで、飲食さえも忘れてページをめくってしまう。 好奇心は猫を殺すというけれど、今回に限っては黒猫と幽霊という組み合わせ。そして昔の僕でさえ、好奇心によりマリアーベルから殺された。 次第に後部座席の2人は前のめりとなり、過去の物語を知ろうとする。まるで映画の始まりを迎えたような姿勢だ。 当の少女からは「別に構わないわ、話しても」という視線をいただいたので、ホテルへたどり着くまでのあいだ、僕らの出会いを伝えることにした。 コーヒーをひとくち含み、そして僕は口を開く。 それはずっと昔、もう10年以上前のこと。 確か日本では中学生になったばかりの頃だろうか。