晩御飯も終わり、自分の部屋へとひきこもった俺は、琴音ちゃんとどこへ遊びに行こうかなどということを考えていた。 そんな折、家のインターホンが鳴る音が、微かに聞こえる。 こんな夜に誰が来たのだろうか、なんてうっすらと考え、そしてすぐに忘れた。 が。 しばらくしてから、階段を勢いよく上がってくる足音が聞こえる。 なんだ? ガチャ。「……祐介ぇぇぇ!」 本邦初公開。我が家の長であり不本意ながらマイファーザーの、緑川孝弘みどりかわたかひろあらわる。呼ばれてないのにジャジャジャジャーン。 部屋まで襲来とは珍しい。俺クシャミしてないよな? と疑問に思っていたら。 おおきくふりかぶってー。 バキッ。 打ち下ろしの右チョッピングライトが俺の右頬を直撃、すわっていた椅子から気分だけもんどり打って倒れる俺。 すぐさま左拳をワンツーで俺へ向けてくるが、それはかろうじて額で受け止めた。あ、殴ったほうも痛そう。「……二度もぶった……!! オヤジにもぶたれたことないのに!」「いやぶたれてんじゃねえかよ現在進行形でよ。つーかおい祐介、おまえなんてことをしでかしてくれたんだ! どう責任取るつもりだ!?」「……は?」 いきなり殴られたものだから、オヤジがついに錯乱したかなんて早とちりしてしまったが、受け答えは正常なようだ。 なんなんだいったいこの展開。 オヤジの勤めている高校に『体罰がありました』って匿名で密告しちゃおうかな。代償として我が家全員が路頭に迷いそうだけど。「ははは? じゃねえ! おまえいつの間に佳世ちゃんを妊娠させるような真似をしたんだ!?」 いや笑ってはいないんだけど。やっぱり錯乱したのかな。意味不明なことを言ってるわ。 残念ながら、俺が佳世を孕ませる未来など、今のところこの世界のどこにも用意されてないはずなのに。 こういう場合110番に通報するべきか、それとも119か。少しだけ悩んじゃうね、テヘ。「母さーん! ついにオヤジの気がふれたから、早く通報しちゃってー!」 結局、どちらに通報するかを母さんに丸投げしたのだが。 なぜかその後ろに美良乃みらの母さんまでいた。しかもけっこう深刻そうな顔つきで。「……どうなってんの、これ」「どうなってんの、じゃねえっつーの当事者が! いいから下へ降りてこい、緊急家族会議だ!」