「カイ――」「え――!?」 アリスさんが俺の名前を呼ぶと、急に俺の頭をグイっと引っ張ってきた。 考え事をしていた俺はその行為に反応しきる事が出来ず、アリスさんに引かれるがまま倒れこんでしまった。 ポフン――。 そして、俺の頭が倒れこんだ先にあったのは、アリスさんの柔らかい太ももだった。 要ようは、膝枕をされている体勢になったのだ。「なななな――何してるんですかアリスさん!?」 俺はいきなりの展開に戸惑いが隠せず、慌てて頭を起こそうとする。「だめ」 しかし――起こそうとした頭をアリスさんに抑えられ、また太ももの上に戻された。「大人しくしとく」 アリスさんはそう言うと、まるで子供をあやすように、俺の頭を優しく撫で始めた。 なんだこの状況!? なんで俺アリスさんに膝枕されて、頭を撫でられてるの!? 俺は急な膝枕に、頭の中がパニックになっていた。 しかも、アリスさんの太もも凄く柔らかい。 普通の女の子よりも華奢な体付きをしていて、太ももにもあまり肉がついてなさそうなのに、プヨプヨとして気持ちよかった。「ねぇカイ――自分がした事を悔やんでるんだったら、あのまま金髪ギャルを見殺しにしてる方がよかった?」 俺の頭を撫でているアリスさんが、優しい声でそう尋ねてきた。 いつもの気怠い雰囲気など今の彼女からは一切感じず、とても気持ちが落ち着く。「それは――」「出来ないでしょ?」「はい……」「だったら、仕方ない。カイは自分がどうなってもいいから、大切な人達を助けたい子だもんね」 そう言えば……昔、そんな話もAさんとしたな……。 俺がオタク趣味に走ったばかりの時、よく漫画やラノベの話をAさんにして、俺の思いとかも言ったりしていた。 それは俺にとって痛い過去だから、もう忘れて欲しいんだけどな……。 Aさんはいつも素っ気ない返信をしてきてたから、普通に流されているものだと思っていた……。「でも、犯罪行為を肯定してしまったら、殺人などを犯す犯罪者たちと変わらないんじゃないでしょうか……?」「何を目的にするかによって違う――と言っても、今度はテロ集団と変わらないってカイは言うだろうね。だったら、これからは犯罪に手を染めなくても、大切な人を救える人間にならないとね」 アリスさんは優しく微笑むと、そう言ってきた。「相変わらず簡単に言ってくれますね……」 俺はそう苦言を言いながらも、思わず笑みが漏れる。 この人が言うと、なんでこんなに心にすんなりと来るのだろうか。 本当に出来そうに思えてくるから、不思議だ。 うん――少し気持ちが楽になった。 だから、もうこの膝枕はいいんだが……。 凄く居心地が良いんだけど、半端なく恥ずかしい……。「あの、なんで膝枕をされたんですか……?」 とりあえず、そこから聞いてみる事にする。