「そんなの……ひどいわ。弱いと決めてかかるだなんて。今に見てなさい」 もう悲鳴じみた声を何度もあげていたマリーだ。額に汗を浮かせ、不機嫌そうな瞳を向けてくる。 しかし試合というのはなかなかに予想をしきれないスポーツでもある。 その理由のひとつが……。「あっ、行け、行け、行きなさい!」 するすると進むボールは、極めて鋭角なパスだった。それは相手選手が伸ばした足をかすめるもので、受け取った小柄な選手はトップスピードに乗り、一気に前線へと切り込んだ。 オッ!とスタジアムが、そして僕らの席も湧く。おそらく数える程しかない好機は、あと3秒とかからずに結果が出るだろう。 そして軽いフェイントをかけた彼は、完璧な仕事をやり終える。それはボール1個分しかない穴へ通し、ギリギリのサイドネットへ突き刺さる一撃だ。 ドドオオオ!「うおおおーー! でかしたあああーー!」「きゃあ、きゃあああ! 嘘っ、嘘おおーー!」 優勝候補に与えた一撃は強烈だ。早く点を取り終えたいと考える彼らだったが、ふと脳裏にこんな言葉が響く。 このまま負けるんじゃないか?と。