「こっちは水だな。だが、こっちは……」 紫色した液体はかなりドロドロになっているがワインだ。 ――だが、舐めてみるとアルコールの濃度がかなり上がっている。 それから導かれる結論は――。「もしかして、上の器に入れた物から特定の物を分離する道具か?」「ほほほ、中々察しが良いねぇ。ここの中間の器に入れた物が抜かれて左側へ落ちるんだよ」「それじゃ、中間の器に水をいれたから、ワインから水が抜かれた――って事か?」「ご明察。これはねぇ錬金術師が使う道具さ」 どういう仕組みかは解らんが魔道具ってやつか。科学では計り知れない動きをするな。 使えるのは液体だけで、金属類には使えないと言う。 だが、待てよ……こいつを使って植物油からグリセリンを抜く事が出来れば、安全にバイオディーゼル燃料を作れるんじゃないか? そうすれば、あんな危険なアルカリとか使わないで済む。「婆さん、これいくらだ?」「はぁ? 買おうってのかい? あんたが?」 どうも婆さんは俺が買うとは思っていないようだ。「まぁ、値段次第だが……」「金貨5枚(100万円)だよ」「よし! 買った!」「本気かい!?」 婆さんが、しわくちゃの顔を驚きで一杯にする。「本気も本気」「ほほほ、こりゃまた随分と酔狂がいたもんだねぇ」 婆さんに金貨5枚を払って、魔道具をアイテムBOXへ収納する。「アイテムBOXかい!? こりゃ、タマゲた!」「婆さん、他にも面白そうな物はないかい?」「ふむ……」 婆さんは顎に手をやると何やら思案をしていたのだが、何か思いついたように部屋の奥に消えていった。「何を持ってくるつもりだろうか」 しばらくすると、婆さんが表紙が厚い古びた一冊の本を持ってきた。 怪しげな雰囲気を醸し出す、その本の厚さは漫画の単行本ぐらいか。