魔法教室の広場では、トゥースが胡坐をかいて座り、その隣にはブル。そのブルの背に紫死鳥が止まっている。 正面にはウォレンが立ち、トゥースを見上げている。「そうですか、アズリー君はやはり……」 そんなウォレンを前に、トゥースは小指で耳をほじりながら答える。「大体あんな数のブレスを、単純な魔力だけで押さえようってのが間違いだ。まぁ、あの場合はあれしかなかったんだがな……」「えぇ、おかげでアイリーン様の命は救われました。ビリーもクリートも、アズリー君やポチさん、リーリアさんの留守を狙ったのにも拘わらず、あの戦力でアイリーン様の命を取れなかったのは確かに痛手でしょう。こちらの被害も軽微……とは言い難いですね。死者も三十人以上ですから」「大変だな」 トゥースが耳垢を吹きながら答える。「いえ、トゥースさんのお昼寝がなければ、こちらは壊滅状態でしたよ。私もアイリーン様も死んでいた事でしょう」「ふんっ」「悪魔と敵対せず我らを助けるにはあれしか手はありませんでした。いや、勉強させてもらいましたよ」「そんな事した記憶はねぇな。それより、これからどうするつもりだ?」 そんなトゥースの言葉に、ウォレンの目がわざとらしく見開かれた。「おや、興味があるのですか?」「うるせぇ。俺様だって死ぬのは嫌だからな。隠れ蓑になるなら、宿賃くらいは払ってやる」 遠回しなトゥースの協力申請に、ウォレンはくすりと笑う。 しかし、その笑みも、すぐに消えてしまったのだ。 アズリーから伝え聞いたウォレンの話。そしてこの場で話した結果、トゥースはウォレンの性格をある程度理解していた。 だからこそ、その笑みが消えた理由に心当たりがあったのだ。 トゥースは大きな溜め息を吐き、静かに目を瞑る。「……ヤツがアレじゃあな」 珍しく、ウォレンすらも大きな溜め息を吐く。「巨大な魔力を一気に放出した弊害……ですか」「あぁ、アズリーの魔力は今、常に空っぽの状態だ。どうしたら戻るのかもわかんねぇ」 トゥースが頭を掻きむしりながら暗雲多き夜空を見上げると、ウォレンもそれに続いた。「いよいよやべぇな……」 そう静かに呟くトゥースだった。