ダナンが勝ち誇って、大声でアピールし始めた。「どこに逃げても無駄だ」「どれだけ素早く動こうが数万匹の虫を避け続けるのは不可能!」「クソガキ。ただの虫じゃないぞ! 一刺しで充分死ねるほどの毒虫だ」「どんな鎧を着ていても無駄だ。呼吸するための隙間があれば、侵入してお前を殺す」 ダナンとイヴァンは随分と自信があるようだ。 確かに大量の毒虫は使い方次第で、かなり強力なのは確かだ。「そんな虫、どこに隠してたんだよ」 魔力の流れから判断するに、別のところから召喚したわけではない。 用意していた虫を操っているのだ。 とはいえ、数万匹の虫を操るのは簡単ではない。「おい、クソガキ。土下座したら許してもらえるかもしれないぞ」「さっさと頭を下げるんだよ!」 ダナンもイヴァンも勝利を確信して、ニヤニヤしている。「いいから、さっさと攻撃を始めろ。しないなら、またこっちから行くぞ」「舐めやがって」「死んで後悔しろ!」 羽虫が一斉に俺に向かって飛んできた。 俺は小さな火球で迎撃する。 守護神が一柱でも、練習次第で充分出せる程度の大きさにしておいた。 ほかの受験生から怪しまれないようにだ。「そんな小さな火球でどうしようって――」 笑うダナンの目の前で、火球は虫の集団にあたる。 その瞬間、小さな火球をぼわっと拡散させる。 拡散させることは火球が使える魔導師ならだれでも使える基本的な技術。 だが、それだけで虫は当然焼け落ちる。「飛んで火にいるバカの虫」「てめえ……」 使い方次第でかなり強力だと思うが、肝心の使い方がなってない。 せっかく小さな羽虫を操れるのだ。 敵に気づかれないよう羽虫を動かさなければ、利点の大半が消えてしまう。「虫だって生き物なんだ。命を粗末にするな」「焼き殺したお前が言うんじゃねえ」「俺が虫を殺すのは当たり前だ。襲ってきたら殺すしかないだろう」 ダナンたちは少し頭を働かせさえすれば良かったのだ。 たったそれだけで、虫に正面から突っ込ませることがいかに愚かか気づけたはずだ。「もうお前らの攻撃は終わりか?」「舐めやがって! 俺たちの攻撃が虫だけだと思うな!」 ダナンもイヴァンも四柱の守護神がいる。 つまり人神と虫神以外に二柱の守護神がいるはずだ。 得意な攻撃がまだまだあるのだろう。「まだ自慢の攻撃があるなら、さっさとしろ」