「来すぎぃ!」 いざレイスのテイムに出かけようという頃。 玄関の前に集まった十人の使用人たちを見て、思わず大声を出してしまった。 今朝、テイムを手伝ってもらおうと思って「今日ヒマそうな序列上位の使用人を集めておいてくれ」とユカリに頼んでおいたのだ。だが、まさか十人も集まるとは思ってもいなかった。 いや、ありがたいけどね? 通常業務は大丈夫なのか、とも思う。「ご心配なさらず。部下たちも育ってきておりますゆえ」 俺の懸念を察してか、キュベロが頼もしいことを言ってくれる。なるほど、こりゃあその部下とやらに特別手当が必要そうだな。「……ん?」 ふと、十人の中に見覚えのない顔を見つける。パッと見で中学生くらいの、髪の短い男子だ。「ソブラ兄さんのいねェ穴を埋めるために連れてきました、俺の部下です。おらッ、挨拶!」「プ、プルッ、プルプ、プルムっす!」 馬丁頭のジャストが紹介してくれた。彼は馬丁のプルムというらしい。ド緊張しているのが一目瞭然だ。「大丈夫なのか? プルプル君は」「はい。まだまだ使いもんにならねェガキですが、俺が責任持って面倒見ますんで」 そういうことじゃないんだが……まあいいや。「じゃあ、二人一組で探索してくれ。出くわした魔物に対してはなるべくダメージの少ない攻撃方法で初撃を与えろ。それがレイスの変化した魔物だった場合は変化が解けるはずだ。レイスを発見したら、追跡しつつ、チーム限定通信で俺に連絡。いいか?」 指示を出すと、皆は良い返事で頷いてくれた。 使用人十人をこの場でチーム・ファーステストにゲスト加入させたため、通信も問題なく使える。 よって、今回は総勢十一人プラス一匹のチームでの探索。シルビアとエコも手伝うと言ってくれていたが、俺としては夏季タイトル戦へと向けた特訓を優先してほしかったので、今日のところは参加を断っておいた。「ぁ……っ……」「ご主人様、私たちはペアでいいですか? と申しております」 使用人たちがあんこの転移召喚によってレイスの潜む山へと次々に移動している間、二人組のメイドが話しかけてきた。真っ白な髪と肌をしたアルビノの少女イヴと、その通訳のルナだ。 私たちはペアでいいかって、別に何も問題はないと思うが、どういう意図で言っているんだ? 見ていたところ、使用人のペアは、キュベロとリリィ、ジャストとプルム、エルとエス、コスモスとシャンパーニ、そしてイヴとルナだった。 ……ああ、なるほど理解した。パワーバランスを考えるとジャストとプルムのペアに不安が残るから、このままでいいのかと聞いているのだろう。 レイスの潜む山の中では、丙等級上位~乙等級下位ほどのレベルの魔物が単体で出現する。この単体でというのがポイントだな。「大丈夫。魔物は単体でしか出現しないから、フクロにされてなすすべなく死ぬというようなことはない。助けを求める通信を送る余裕も十分にあるだろう。そしたら俺が転移して向かうから心配するな。ってことで、お前らはペアで構わないぞ」「……ぁ……」「ありがとうございますご主人様、と申しております」