「本当は、屋敷を崖の上に建てたいんだがなぁ」「はは、そいつは面白そうですな」「そいつは面白そうだし、景色がよさそうだな! 秘密基地っぽくていい」 アキラも賛同してくれた。「だろ?」 男たちは乗り気なのだが、リリスから物言いがついた。「ケンイチ、あまり酔狂な建物にすると、後々大変なことになるぞぇ? そういう無駄遣いをした貴族が沢山おる!」「私も、そう思います」 リリスとプリムラの言葉に、男のロマンから現実に引き戻された。「ケンイチ、自宅ってのは奥様の意見も大事だからな。ちゃんと聞いたほうがいいぞ?」「そうだな」 とりあえず、男のロマンは諦めるしかないようだが、建築の契約をマロウ商会を介して結んでもらう。 なぜマロウ商会経由だといえば、できたてホヤホヤの辺境伯領に信用がないからだ。 位階が高いのは確かだが、こんな野っ原と森しかない僻地にできた貴族領を誰も信用なんてしていないってわけ。 屋敷を建てた途端に破産した――なんてことになったら、大工の経営も危なくなるからな。 日本でいう連鎖倒産だ。「材木は――開拓のために、ここの森から切り出すから、それを使ってほしい。できるか?」「そのためには、ここに製材所を作らにゃなりませんねぇ」 この世界の大工は、材料の切り出しを手配して運搬などをする材木屋の仕事も兼ねている。 ここに製材所を作れば、木材をアストランティアへ運んで加工するより、手間が省けるはずだ。「丸太の運搬は俺のアイテムBOXがあるから、楽だぞ」 俺のアイテムBOXから、丸太を取り出す。「ひぇ!」 突然、極太の丸太が出現して転がり、親方が声を上げた。「いやはや、お嬢さんから領主様がアイテムBOX持ちだとは聞いてましたが……」「あちこちで、加工して運んでくるより楽だろ? 屋敷だけではなくて、住民たちの住居も建ててもらうつもりだし」「こりゃ、大仕事だ。下手をすると、ここがアストランティアより大きな街になるかもな」「私は、そう思っておりますよ」 プリムラが、得意げに大きな胸を張る。「それじゃ、ここに製材所を作るのは決定なのか?」「実は、アストランティアでは、もう仕事がそれほどないのでございます」「ここの人口が増えるとなれば、いくらでも仕事が増えるからなぁ」「その通りでございます」 最初の計画として――アストランティアまでの直通道路を作るつもりだから、工事で伐採木がでる。