そして。 高気圧琴音ちゃんは、すぐに自分の部屋に引きこもり。 グレーのスウェットに、キ〇ィちゃんサンダルという、なかなかレアな恰好だったんだけど。「おーい、琴音ちゃん?」 ドア越しに呼びかけるも、返事はない。 初音さんはクスクス笑いをこらえられない様子。さっきまでの重苦しい雰囲気はどこへやらだ。「あらあら、琴音ったら脱ぎ捨てた下着とか隠してるのかしら」「脱ぎ捨てた、って……」 下着ってそこらへんに脱ぎ捨てるものなのか。女子の生態なんてわかんねえって。 ………… ハイ妄想ストップ。 俺は琴音ちゃんと会えただけで嬉しいので、部屋の中に入りたいとか思っちゃいないんだけどなあ。 片付けなんていいから、とりあえず顔を見せてくれよ。 というわけで、琴音ちゃんの部屋の扉をノックする。 コンコンコン。「……合言葉は?」 なんだそりゃ。仕方ないので、適当に答えてみよう。「スキトキメキトキス」「それは恋の呪文です」「パラリンリリカルパラポラマジカル」「それは変身の呪文です」「ファイヤー! アイスストーム! ダイアキュート! ばよえーん!」「それは連鎖の呪文です」「かちあや しおまび でくすら づちおり」「再開の呪文は無効です」 どうすりゃいいんだっつの。「いいから出てきてよー。部屋に入ったりしないからさ」「そ、そうじゃありませんから! もう少し待っててください!」「……あい」 初音さんの「あらあらまあまあ」という言葉が、やわらかい。 さすがシリアスブレイカーKOTONEコトネ。俺は翻弄されっぱなし。 初音さんとサシで話した先ほどとは違う意味で、居心地が悪いようなそうでもないような。 ま、もう少しすれば天岩戸も開くだろう。俺、待つわ。